ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[647909hit]

■高橋徹也 バンドセット・ワンマン『友よ、また会おう 2019』
高橋徹也 バンドセット・ワンマン『友よ、また会おう 2019』@CLUB Que

自身の才を自覚して、それに身体がついていく(喉のコンディションとかコントロールとか音への反射神経とか)とこうなるのかーという……圧巻 pic.twitter.com/gkNUzBVGTD— kai (@flower_lens) December 6, 2019
毎回毎回素晴らしいいうとるが毎回毎回違う面で素晴らしいとこが見つかるんですよ! 歌は勿論今回ギターの低音の歪ませ方にもシビれたな! ああいう音出してるの初めて聴いた気がする。歌も演奏もキレッキレなのに余裕が感じられるという恐ろしさ。

-----
高橋徹也:vo, g、鹿島達也:b、脇山広介:drs、宮下広輔:pedal steel
-----

佐藤さん(key)欠席につきこの四人の編成で、というのはなんでも初めてだとか。そのためいつものバンドセットとはアレンジが違いました。エレピや(シンセで鳴らす)弦のパートを宮下さんが担ってたんだけど、ペダルスティールってフェンダーローズみたいな音も出せるんだなあ。「えっ、今の音誰が出した?」と探すと大概宮下さんだった。そうした妙も楽しめたんですが、これがなんというか、ひとり足りないからという策ではなく、どんな編成でも曲の魅力を引き出せるバンドの自信のようなものを感じたんです。このメンバーで高橋徹也の楽曲を演奏するとすげーぞ! 的な。MCでもいってましたが、鹿島さんとはもう四半世紀のつきあい。高橋さんの作曲や歌の特性を最大限に活かすには、というミッションに挑み続けるメンバーといおうか。「チャイナ・カフェ」では全員のソロまわしがあったりと楽しかった。鹿島さんがアップライトベースを弾いた4曲はもーバンドはいきものだというのがまざまざと感じられました。

しかし特筆すべきはこの日の高橋さんの調子のよさ。めちゃめちゃ声が安定していた。地声とファルセットの切り替え、転調の高音がこんなに綺麗に出るとは……ここちょっと毎回ギャンブルみたいなところがあって、その不安定さが魅力になるときもあるのです。でも今回はそんなスリルなんぞいらんわいという安定感でした。序盤からピッチがすごくしっかりしていたので「今日『新しい世界』やったらすごくうまくいきそうな気がする、やるかな?」と思っていたら存外早く演奏されたので「早! ああそうか、まだ喉に疲れが蓄積していない中盤にやれば高音が出ると考えてのことかな?」と思っていたら、実は結構終盤だったと指摘されて驚いた。そしてその出来映えの素晴らしさ! ヘンな例えですが四回転半跳べた! みたいな感覚でした(スケートシーズンだけに)。身体表現という意味では音楽家とアスリートには通じるものがある。

ご本人がいうには「今年はバンドのライヴが少なくて」、バンドセットばかり観に来ている自分はトリオ編成だった『Long Hot Summer 2019』以来のライヴだったのですが、四ヶ月の間に何があった…いや、もともとすごいライヴをするひとだけどまだ上があったか……と思わずにはいられません。

自分が描く曲のアイディアに自分の身体が追いつかないときってあると思うんです。頭のなかではこんな音が鳴っているのに、それを自分の身体を使って再現出来ないときのもどかしさは本人にしか判らない。リスナーはプレイヤーの身体を通してし聴くことが出来ないのでそれを、期待を抱き乍らものんべんだらりと待っている。自他ともに「怪物」と認める『夜に生きるもの』を呑み込み内に納めた高橋さんが、次に向き合ったのは自身の身体だったのかな。でもMCでの話を聴いていると普段からストイックにトレーニングしているようだし、ライヴ当日をピークパフォーマンスにするためのスケジュールを自らに課しているようです。ソロやデュオ、弦楽四重奏との共演といったさまざまな編成でのライヴもコンスタントに続けている。その積み重ねとコンディショニングがここにきて一気に花開いたのかな? などと思った。


[5]続きを読む

12月06日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る