ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■(元)グランドキャバレーのPenguin Cafe
Penguin Cafe Handfuls of Night Tour 2019@東京キネマ倶楽部
キネマ倶楽部でPenguin Cafe。今回は7人編成で、1st Setは新作『Handfuls of Night』全曲、2nd Setは先代の楽曲も交えたベスト選曲。うー、胸いっぱい。ここは安全だと思える方舟みたいな楽団。 pic.twitter.com/2lCXej4bjo― kai (@flower_lens) October 15, 2019
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Arthur Jeffes:pf, key, harm
Andy Waterworth:db
Rebecca Waterworth:vc
Vincent Greene:va
Clem Browne:vn
Oli Langford:vn
Pete Radcliffe:perc, log drum, harm
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「タイタニックが沈む迄演奏を続けた楽団は、海でペンギンに生まれ変わりペンギンカフェを結成した。やがて彼らは陸に上がり、再び船に乗り込み、今日ここで演奏をしている。彼らと同じ船に乗り合わせた聴衆は、目の前の危機的現実からしばし離れ、演奏に聴き入る。」
というのはPenguin Cafeの初来日公演を観たときに浮かんだ妄想で、そのイメージはずっと続いている。今回のハコ、東京キネマ倶楽部がまたね、難破船(失礼)みたいな雰囲気でね。嵐を逃れてきたひとが迷い込んだらそこに楽団がいて……などと妄想も続く。
「such a beautiful old venue!」。バンドも気に入ってくれたようです、よかった!
安全な場所があっても、そこは極限の地。船であったらそれは沈むし、南極であったら遭難する。身を寄せあって寒さをしのぐペンギンたちは、群れの外のガード役を交替で引き受ける。それでも何羽かは命を落とす。楽団の演奏を聴き終えたら、それぞれの人生に襲ってくる荒波に再び立ち向かうため外へ出て行かなくてはならない。そう考えるとオアシスみたいな場所でもあるな。極地なのに(笑)。オアシスは交通、交流の場であって定住は出来ない、とはよくいったものだ。
1st Setは『Handfuls of Night』をトラック順に全曲。「Next piece, 」とその都度アーサーが解説をしてくれる。コウテイペンギンはペンギンのなかでいちばんおおきい、ジェンツーペンギンはHardest Worker……何度「Penguin」という単語を口にしたかな。英語本来の発音だと「ペングゥィン」というニュアンスなんだー、と妙なところに感心する。グリーンピースがアーサーに依頼した「南極ペンギンについての楽曲」から生まれた今作、ピアノで作曲したものが多いのかな? 前日のインストアライヴではピアノソロで成立していたが、この日のアンサンブルセットでは当然乍ら音のレイヤーが増え、楽曲の新しい魅力が見えてくる。「Chapter」で箱体を響かせるようなコードを、「Adelie」でピアノと丁々発止のフレーズを繰り出すアンディのダブルベース。「At The Top〜」での歩を進めるようなピートのキック。アーサーも前日とは違い、ピアノをプリペアド使いして多彩な音を出す。「Midnight Sun」はミュートしたピアノ弦がハープのように響く。うすぐもりにぼやけた陽光、眼前に夏の南極大陸が現れる。極上のアンビエントミュージック。
2nd Setはリラックス、新旧のナンバーを織り交ぜ楽しいひととき。「Protection」のベース格好よかったなー! アンディにほれぼれ。アコースティックで美しい音楽を奏でる楽団のパーカッションがさりげなくツーバスなのアツい。Simian Mobile Discoのカヴァー「Wheels Within Wheels」で大活躍してました。あとこの楽団、ヴィオラの音がしっかり聴こえるところが好きなんだ。そうそう、「Landau」の導入〜インプロ〜「Wheels Within〜」という流れでは、興に乗ったか大盛りあがりするストリングスと、いつ入ろっかなーとニコニコ眺めるアーサー、みたいな図が出来てて面白かった。みんな呼吸をするように演奏してる。
サイモンの楽曲が減ってきているが、アーサーが父を深く愛し尊敬していること、父の楽団をとてもだいじに思っていることは誰もがわかっている。アーサーはこれからまだまだ、素晴らしい音楽を世に送り出し続けてくれる筈だ。そして、今ではお父さんのことを知らないリスナーも増えているだろう。アーサーの音楽に魅了されるリスナーは、これからも増え続ける。
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10月15日(火)
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