ID:43818
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by kai
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■高橋徹也 トリオ・ワンマン『Long Hot Summer 2019』
高橋徹也 トリオ・ワンマン『Long Hot Summer 2019』@Shimokitazawa 440
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高橋徹也:Vo, G、鹿島達也:B、脇山広介:Drs
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トリオ編成初めて観ました。このメンツでのライヴは二度目で、ワンマンはお初とのこと。各々の音が剥き出しで、各曲のアレンジも相当変わっておりとてもスリリング、聴いてる方も気が抜けない。鹿島さんからスタートする曲も多く、ワントーン目のキーから次は何だ? と探る面白さも。キー、コード、リズムが徐々に集まり、メロディが現れたときのカタルシス! なんだか彫刻……というか石膏像みたいだったなあ。カンカンカン、と型を割るとパカッとなかから曲が出てくるの。
“Long Hot Summer”のタイトルに基づき構成されたセットは、真夏の夜のジャズ! フュージョンカラーあり、ブリティッシュロックありと、バラエティに富んだ選曲、生々しい演奏。「心は全裸で!」と仰ってましたが演奏も相当剥き身でした。鹿島さんはエフェクトもかなり凝っており、アップライトベースを使うナンバーもあり。脇山さんもエフェクター使ってたのかな、すごいリバーブかけてた箇所があった。あれどうやったんだろう、PAなのかなあ。高橋さんはカッティング主体のストレートな音色で、リズムが強く聴こえました。今回コードを出せるのがギター1本だったからかな。
で、ロックセクションなんですが、ブリティッシュ……いや、もっとローカルだな。マンチェスターのポストパンク。いうたらThe Smithですよ。「ハロウィンベイビー」「グッドバイ グッドバイ グッドバイ」「醒めない夢」のセクションは『俺のThe Smith解釈』な流れで震えたわ! 私が勝手にそう思ってるだけだが。しかしこうやって聴くとスミスってホント画期的でオリジナルなサウンドだなあ。それを自分のものにしてしまっている高橋さんもすごいが……モリッシーは中低音のヴォーカルが魅力ですが、高橋さんのハイトーンな声がこのサウンドにこうも似合うかと新しい発見でした。
声といえば、この日ちょっと喉のコンディションが不安定で「新しい世界」の転調の部分がかなり危うかったんですね。ちょっとハラハラしてたんですが、直後「大統領夫人と棺」の鹿島さんがすごかった。俺に注意を向けろといわんばかりの演奏で、脇山さんとのやりとりにも火花が見えるよう。いつものことではあるけれど、この日は怖いくらいの気迫だった。どんどん姿勢が前のめりになって、高橋さんにどんどん近づいていく。決して広くはないステージで、ネックがぶつかってしまうのでは? と思うくらい近づいて演奏していた。こういうところバンドらしいなーと思ったり。「24年のつきあい」、こういうときどうすればいいかお互いわかっているのだろうな。
「ライヴが決まったら、当日の自分をイメージして生活するんです。毎日同じ時間に同じことをして、トイレ行って(笑)その日に向けて……」と話してましたが、ピークパフォーマンスのためのフローを実践しているということですよね。今回はトリオ編成での選曲やアレンジを直前迄つめていたとのことなので、ちょっと勝手が違ったのかもしれません。しかしここで高橋さんは「ちょっと声が出なくて」「調子悪くて」といった言い訳を絶対しない。プロフェッショナルとしてのプライドと、プレイヤーとしてのチャレンジングを両立、継続していることは尊敬するなあ。
そうそう、「心は全裸」発言を筆頭に、毎度のこと乍らMCも面白かった。夏休みというお題から、鹿島さん曰く「独走したね(誰も話にからめない)!」。夏休み最終日に宿題を手伝ってくれた母親、泣き乍ら「どぶでタニシをとりました」と書いた日記、ワンカップ大関のコップに入った麦茶、ぐるぐるまわり乍ら消えたいぬ。独特の話術もあり相当笑ったんですが、いぬの話なんてなんだか同時に泣きそうになっちゃった。こういう記憶と視点からあの歌詞の世界が描かれるんだなあなんて思った。440は窓が大きく外光が沢山入るのですが、夕暮れどきに開演してだんだん暗くなっていくその雰囲気もよいのです。風知空知ともども、下北沢の素敵なライヴスペース。
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08月02日(金)
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