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by kai
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■『ヘンリー五世』
彩の国シェイクスピアシリーズ・第34弾『ヘンリー五世』@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
わーめちゃよかった。『ヘンリー四世』からの流れをどう伝えるかなと思っていたんだけど、かつて自分が演じたフォルスタッフをああいう形で登場させるか、という「案内人」吉田鋼太郎の演出に唸る。鋼太郎さん自身が演じるこのコーラス(コロス/説明役)は残りのシェイクスピアシリーズ上演にも有効な手法だな。演出を兼任する鋼太郎さんの助けにもなるのではなかろうか。以下ネタバレしてます。
開幕は追憶。五年前(もうそんなかー)のハルとフォルスタッフがスクリーンに映し出される。走り、跳び、じゃれあうふたりは無邪気そのもの。やがて新しく厳しい時代がやってくる。ハルはフォルスタッフを打ち捨てる……映像の中の放蕩息子は、思慮深くも激しい気性を抱えた王として帰還する。『ヘンリー四世』から続投の松坂桃李は精悍さを増し、堂々としたもの。
追われたフォルスタッフは新しく始まる物語の説明役となる。動きづらい着ぐるみを捨て、スタイリッシュな衣裳(これ格好よかったわー)に着替えて悦に入る鋼太郎さん、ノリノリです。観客と舞台の橋渡しを嬉々と演じる。しかしみるみるうちに台詞に力が入る。初日から一週間といったところだが、正直声が嗄れ気味だ。心配ではあるが、それだけの意気込みなのだろう。何がなんでも観客を、この作品の虜にしてみせる。そんな気概が感じられる。そして隙あらば、おいしいところを俺がかっさらうぞという茶目っ気(笑)。鋼太郎さんのこういうとこ憎めない。
自虐的だと感じるくらい「想像力を使ってください」と彼はいう。埼玉県立彩の国さいたま芸術劇場が時空を超えます、と。それには皆さんの想像力が必要ですと繰り返す。「大丈夫ですか、ついてきてますか?」と問う。その観客の想像力だけに頼る訳にはいかないぞというカンパニーの気迫たるや。機動力あふれるセット、複数の役を演じ目まぐるしく出入りする役者たち。ギターとパーカッションの生演奏、ド迫力の殺陣。声、足音、ぶつかりあう身体と身体。埼玉県立彩の国さいたま芸術劇場が雨の戦場になる、血と泥にまみれた砦になる。何度その瞬間にシビれたか。『蒲田行進曲』ばりの階段落ちもあります。飛んでくる矢の扱いとか、演劇って面白いなあというアイディアが随所に見られます。といいつつふと思ったが、少数精鋭がアイディアを駆使して大軍と戦うこの図式、『十三人の刺客』好きなひとのツボをつきそうだなってそれ私だ。エンタメの魅力がギュッとつまっていますよ!
それにしても演者はたいへんなことだと思いますわ…マチソワとかもう……無事千秋楽を迎えられますように。
ウェールズとイングランド、そしてフランスと、英仏そして翻訳された日本語の台詞がナイスアイディアで飛び交う。薩摩弁のアイルランド訛り(確か。ちらっとあったよね?)そして土佐弁(だよね?)のウェールズ訛りには大ウケ。しぇからしくしゅばらしい兵法をまくしたてる、キレものフルエリンを演じる河内大和に抱腹絶倒。最高です。そしてネギな! 今回最前列だったのですが、衣裳にはお香がたきしめられているのか戦闘中はいい匂いが漂ってくるんだけど、終盤はネギ臭がすごかったです(笑)。
フルエリンが身につけるネギは、ウェールズ人🏴にとっての誉れ高い徴なのです^-^
ポロネギ(西洋ネギ)は、ラッパスイセンとともに、ウェールズの国花・国章で、ウェールズの守護聖人デイヴィッドのシンボル。彼はウェールズ兵に、戦場で敵味方の区別をするために帽子にポロネギをつけさせたそうです^o^/ pic.twitter.com/48aTolChDX― 河内大和 yamato kochi (@k_h3021) February 11, 2019
これね。
それにしても、現代に上演するにあたってつくづく示唆に富んだ作品だ。過去の狼藉から身を滅ぼすひと、人生をやり直す立場に立たされそして見事挽回するひと。寛容と狭量は紙一重。いくら紳士的であろうとしても略奪を止められないし、戦局が変わると捕虜も殺す。戦勝国への賞品として差し出されるといっても過言ではないキャサリンは、英語を練習してヘンリー五世との出会いを待っている。そしてヘンリーは、少年のような純真さをもってキャサリンに求婚する。
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02月16日(土)
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