ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■2017年のSPARKS
SPARKS@東京キネマ倶楽部

SPARKSがやってきたよ〜! 最新作『Hippopotamus』をひっさげての三ヶ月に及ぶワールドツアーが、ここ日本で最終日を迎えます。向かうは鶯谷、東京キネマ倶楽部。グランドキャバレーの跡地を雰囲気そのままに残しているホール、エレガントにいかがわしいスパークスにぴったりじゃあございませんか。鶯谷駅からの道の妖しさ、古いビル、ガタついてる(ように感じる)エレベーター。終演後は6Fのフロアから階段で降り、途中のフロアには社交ダンスの衣装やダンスホールの小道具がおいてある……ショウが始まる前から、ショウが終わってからもその空気を楽しんで帰れるまるで小旅行。菊地成孔関連のバンドが一時期ここでやっていたので何度か行っていたけど、この空気たまりませんなー。新宿にあった頃のリキッドルームも思い出すよねなんて話す。

“Two Hands, One Mouth”があればどこでもスパークスワールドを出現させられるメイル兄弟ですが、今回はThe Last Shadow PuppetsやMini Mansionsのメンバー(後述)を従えた七人編成のバンドセットでガッツリ聴かせてくれました。登場したメンバーたちはおそろのボーダーシャツ。Bの子だけノースリーヴ仕様(昨日迄は袖があったらしい)で海のマッチョくんぽい。ラッセルもボーダーだけどちょっとライン配置が違うフロントマン仕様、ロン兄はいつもと同じズートスーツ……ではなくジャケットとネクタイがボーダーでした。かわゆい。

往年の名曲は瑞々しく、最新作からの曲は既に往年の名曲。ラッセルの声はずっとツヤツヤで、ロン兄のダンスはいつも最高で、眼福耳福でおらは今天国にいるのかと思うような時間。keyのサポートがいたので、ロン兄のエレピだけでなくシンセのエレクトロなアレンジが効いてます。Gはディレイやディストーションのかかった太くて厚いソロや、軽快なカッティングで楽曲を現在の音像にすると同時に70〜80年代のロックの原始的魅力を感じさせてくれるというクロニクルっぷり。50年(!)の活動のあのときこのとき、あんな音こんな音を凝縮して、一夜のショウを見せてくれる。奇妙で、不気味で、最高にキュート。

いんやそれにしてもラッセル、ファルセットヴォイスのコントロール術の素晴らしさよ……。歌詞の内容はエグいものばかりといってもいい。繰り返される言葉の数々が、あのファルセットによって魔法使いの呪文のように聴こえてくる。呪文といってもそれは呪いではなく、聴衆を祝祭空間へと誘い込んでくれるもの。裏声と吐息が溶けあう、魔法の世界。しかも今回衣装があれなもんで妙なヘルシーさも漂っています。終始動きまわって、跳ねて、腕をあげてとキラキラしたポップスターの挙動なのに息切れなどどこ吹く風。元気! すごいよ…見習いたい……ああいう矍鑠とした老人になりたい……。老人と言い切ってしまってますが64歳であんだけ唄えて動けるってやっぱすごいよ……。ロン兄に至っては太平洋戦争が終わる直前に生まれたと記憶しているので御年72ですよ。それであのダンス、転んで骨折とかしませんようにと違う意味でハラハラするようになった。サポートメンバーなんて、こどもどころか孫世代なんじゃないかね……ステージングもおじいちゃんたちをたてつつ奥ゆかしくはっちゃけ、手堅い演奏で場を盛り上げてくれました。

観る度目がちっちゃくなってってるよね(加齢)と話したりしたんですが、それもまたよし。“No.1 in Heaven”つってもまだまだ地上にいてくださいよ。よよよ。

フロアにはさまざまな人種、年齢、ジェンダーのひとたちが笑顔で集ってる。ここはどんなひとも自分でいられる天国だ。自分の前にはビールをガンガン呑みキャッキャ観ている外国人のおっちゃんふたりと、マフラータオルを首にかけ、スーツでノリノリ拳をつきあげ感極まってるおっちゃん。最後にロン兄が「マタアイマショウ」と挨拶し、フロアがわあっとわく。ふたり組はキョトンとなって、ぐるりと振り向きスーツのおっちゃんに助けを求めるような顔をして、同時に「「in English!」」とつめよってた。ウケた…声がそろってたのがもうかわいくてな。一瞬面喰らってたスーツのおっちゃん、シーユーアゲインだよと教えてあげて周囲のひとたちもニッコリでした。ピース。


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10月25日(水)
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