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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『華麗なるリベンジ』
『華麗なるリベンジ』@シネマート新宿 スクリーン1

原題は『검사외전(検事外伝)』、英題は『A Violent Prosecutor』。2016年作品。今年の一月に渡韓したときあちこちで予告編を目にしていた『検事外伝』がなにやら素敵な邦題になって公開されましたよ。か、華麗……?

いやーしかし面白かった、良質エンタメ。熱血検事が冤罪で収監、かつて送り込んだ犯罪者たちにリンチを受ける、やがて刑務官や服役囚たちから信頼を得て先生と呼ばれるようになる、個室なんかももらっちゃう、その個室を自分好みに飾ってたりする、賄賂も差し入れもあるよ! そこへ彼の無実を証明できる新入り詐欺師が入所してくる……。『ショーシャンクの空に』?『親切なクムジャさん』?『検察側の証人』? さまざまなモチーフが連想されますがそのさじ加減がいい。コメディ演出も絶妙で、笑いで許せる隙がある。しかし筋が通っている。検事は収監されたことで自分を省み、事件にならなかった数々の罪を償い、冤罪には裁判で決着をつける。

映像はスタイリッシュ、シーンを時系列順には並べず観客の興味をひき、のちにその謎を明かすという展開も巧み。詐欺師が筆跡を練習していたサインが誰のものかわかったとき、その使いどころが判明したときのカタルシス! 詐欺師がソウル大学のスタジャン着るシーンなんて、一瞬なのに客席にドッと笑いが起きました。テンポ、リズムがいい!

詐欺師とか潜入捜査官とかスパイってホントに怖い職業。変装と言ってもたかがしれてる、基本的に素顔を晒しているから面は割れてるし、ひとりきりだし、己の口八丁手八丁だけがたより。余程の度胸がなきゃ出来ない……と思わせられる場面も多く、詐欺師は何度も命に関わるようなピンチに直面する。ところがこの映画、悉く笑える展開で危機を脱してしまう。だんだんそれが観客にも周知され、「あっ大丈夫大丈夫、ハラハラするけど悲劇にはならない!」とある意味安心して楽しめる。こういうとこも巧いなあ。

ファン・ジョンミンとカン・ドンウォン、全くタイプの違うふたりがバディになるという設定も楽しい。ふたりとも決して褒められる人物ではない、欠点も多い。しかしどちらも頭がキレる。バディなのに離れて行動する。ジョンミンさん演じる検事は、檻のなかからドンウォン詐欺師に指示を出す。裏取引で手にした携帯電話、面会での対話のなかにひそませるヒント。検事は策を練り、詐欺師は瞬時にその意図を理解する。聖書の一節が暗号になるくだりは韓国ならではだなあと思う。登場人物の育った背景を説明せずとも通じますもんね。

まーそれにしてもふたりとも、自身のチャームを存分に発揮しておりました。ジョンミンさん、鳶色の瞳が物語る物語る。それをまたいい光の具合でカメラが撮ってる。声の力、しなやか立ち居振る舞いが法廷シーンで発揮される。「私は罪を償った」と宣言するときの格好よさと言ったら。詐欺師を個室に招待してチキンでもてなし、取引成立! となったときの表情の、なんともいえない色気もな……。ここで色気使ってどうするのよ…素敵すぎるわ……。ドンウォンさん、かわいいかわいい。「顔は殴らないで!」と言っても素直に「そうよね〜そんな綺麗な顔に傷つけられないわよね〜」とか思う。若い頃のSMAP中居くんが大柄になった感じです。顔立ちも、ときどき見せる邪気を含んだ表情も似てるよねえ。詰めが甘く嘘も下手、よくもまあこんな甘々で詐欺師やってこれたな…いや、前科9犯てことは全部バレてるのよね。懲りないね、アホなのね……てな人物像だけど、なんというか……「美形のオ・ダルス」といってしまいたいくらいの愛嬌なのだ。素晴らしいひとたらしっぷり。


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11月13日(日)
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