ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■猫のホテル『苦労人』、高橋徹也×小林建樹『1972』
濃いハシゴでして、両方観ている(知っている)ひとにだけ通じる話をすると、中村まことと鹿島達也の格好よさ、色気には共通するもんがありますなあという……。あと『苦労人』の音響は佐藤こうじ(Sugar Sound)。佐藤さんはsugarと名乗りたくなるのだろうか。
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猫のホテル『苦労人』@すみだパークスタジオ倉
再々々演とのこと、初見です。何度も繰り返し上演されるだけのことはある、猫ホテの魅力がつまっている。千葉雅子と演者たちの心意気を堪能出来る。酸いも甘いも噛み分けすぎて、清濁併せ呑みすぎて、苦虫を噛み潰しすぎて諦め諦めそれでもやっぱり抗ってしまう男たちの、500年の歴史。
能楽堂を模した舞台上で繰り広げられるのは「ごん」を名に持つ男の生きざま。初代(室町)中村まこと、二代目(戦国)村上航から、昭和の村上航、平成の中村まことへ。間を森田ガンツ、小林健一、久ヶ沢徹、市川しんぺーで彩る。全員が複数の役を演じ、「ごん」はときに物語の主役となり、ときに市井のひとびとになる。場面(時代)ごとにモチーフとなる作品があると思われる。例えば江戸のパート、死人を踊らせるくだりはおそらく落語の『らくだ』。昭和のパート、スカートを履かない娼婦たちは『肉体の門』。これらをモチーフに、エチュードから構成されたやりとりが進む。昭和の任侠映画の台詞まわし、言葉のリズム感の完コピが見事。千葉さんの腿も拝めて眼福。村上さんの、さびしがりなのにひとりでいるちんぴらっぷりも素晴らしい。ちんぴらがこれほど似合う役者、貴重だわ……。しんぺーさんの死体はもはや芸の域。人生はコントか? としかいいようのない滑稽さは、演じる側が必死になればなる程、汗や唾を飛び散らせる程、切実さに変わる。笑い乍らも涙、涙。
で、この「コントか?」というのが曲者で。久ヶ沢さんという役者の特質ですが、コントの腑をシリアスの皮にくるむのが巧すぎる。シリアスの着ぐるみ着てる感じなのね……。で、いつその着ぐるみを脱ぐのかと身構えていると最後迄脱がなくて、それがえれえ格好よかったりするの。もう、怖いこのひと!『地獄のオルフェウス』のときですらドキドキしたもんね…コントになったらどうしようと……ならなかったけど。今回は笑ったらどうしようと思ってるうちに二枚目ぶりをビシバシ出してきたので素直に素敵と思うことにしました。はい、久ヶ沢さんでこういうのが観たかったです。佐藤真弓との身長差がツボでツボで。といいつつ、おそらくエチュードから出来たと思われるやりとり(社歌のくだり)では頭おかしいっぷり全開で震撼した。それを受けるしんぺーさんも素晴らしい。苦労が窺えた。それにしてもこの役、以前は誰が演じたんだろうと調べてみれば2007年版は菅原永二だったよ! うわあこっちも観たかった!
しっかしオープニング、客席フロアに降りたまことさんが相当段差のある舞台上に助走なしの両足踏み切りで飛び乗ったのにはシビれた。ギャー惚れる! そしてこんなに褌姿の男たちを観たのは『はぐれさらばが“じゃあね”といった』以来です。どなたか仰ってたけどしんぺーさんの肉体は劇団のたからもの。村上さんの身体はアスリートではなく労働者のそれといった趣で説得力あった。久ヶ沢さんの身体はいつものことだが芸術品でした。そういえば『はぐれさらば〜』でも久ヶ沢さんの褌姿観たわ……有難うございます有難うございます(手を合わせる)。
よだん。 NHKの『ファミリーヒストリー』観てて「遡って調査してるうちに何かやばいことが出てきて、お蔵入りになったものってあるんだろうねえ」と話してたことがあるんだけど、それを思い出したな……。今しかない人生なのに、自分の知らない過去がついてくる。それを背負わされてどうしろっていうんだ、ってね。苦い。猫ホテで描かれるひとたちは、それでも前を向くのだ。
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高橋徹也×小林建樹『1972』@LAST WALTZ
いやもう小林さんをひっぱりだしてくれた高橋さんと縁を作ってくれた鹿島さんに感謝するばかりですよ! イリオモテヤマネコとか呼んでたけど最近はもはやツチノコめいてきて「実在したっけな…?」と思うくらいなのでな小林さん……。1972年生まれのふたりによるツーマンです。
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07月08日(金)
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