ID:43818
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by kai
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■『クレイジーキャメル』
大駱駝艦 天賦典式『クレイジーキャメル』@世田谷パブリックシアター

今回の天賦典式は「舞踏仕立ての金粉ショー」! タイトルはフランスの老舗ナイトクラブ、クレイジーホースから。大駱駝艦ですからね! うえええええ素晴らしかった〜! 毎回素晴らしいけど! ここ数年は人類や地球、宇宙が辿る果てを壮大かつダークに描く作品が続いていると感じていましたが、今回は舞踏スペクタクルに麿さんのあまずっぱい初恋の思い出、そして思春期のモヤモヤが織り込まれ、エンタメ要素もたっぷりです。2012年初演、パリ日本文化会館開館15周年記念作品として上演されたもので、祝典的な要素が強いからというのもあるでしょう。

モネの画集を読みふける男子学生、その男子に恋するふたりの女学生。この男子学生が麿さんを投影した人物ですが、当の麿さんは当然女学生のひとりを演じます(笑)。学校の先生と用務員さん(麿さん曰く小使さん。今では消えた言葉)も登場。学ラン、セーラー服、箒にちりとり。学校を連想するモチーフに囲まれ、恋の鞘当てが繰りひろげられる。そんな登場人物たちの内的世界を表すように、金粉をまとったダンサーたちが随所で踊る。メインの使用曲であるヴィヴァルディの『四季』は主に学校生活のパート、土井啓輔によるテクノを基調とした激しいナンバーは金粉ショーのパート。下駄を履きリズムを踏み鳴らすダンサーたちの格好よさ、たまらないものがありました。音楽も踊りも躍動感あふれ、動きもダイナミックなのでキュー出しの声もいつもより大きい。通常だとシュッ、とかひゅっ、といった感じの、声というよりは息遣いでキューが出されるんですよね。それが今回、叫びともいえる声を合図にダンサーたちはフォーメーションを変える。麿さんが叫ぶ場面もあった。舞踏における大声、新鮮といっていい響き。

大駱駝艦から直接チケットを買うと、最前列ド真ん中の席になる率が高い。有難いことなんですが、体調によっては舞い散る白粉から鼻炎が起きてしまう(笑)。今回はちょっと間を空けてとってみた。4列目。そしてその4列目迄届く、ダンサーたちの汗と塗料がいりまじった匂い。いきものの匂いだ、と思う。金に彩られた顔や胸に、玉の汗が浮き、光る。男性ダンサーは全身金色、女性ダンサーは顔からデコルテ迄白塗り。そのコントラストも美しい。

赤と黒に塗り分けられた八本の柱は照明により黒部分が闇に沈む。角柱から、天を刺すような尖塔に。姿を変え舞台空間を蠢き、その森のなかを学生たちはさまよう。金色のダンサーたちが見え隠れ、性の目覚めの混乱に若者を陥れる。かつての女学生は、淑女然とした白のドレスと妖艶な黒のドレスをそれぞれまとい、男子学生をつつみこむ。クライマックスはミラーボール。ラブ&ピース! ダンサーたちの汗のような、光の粒が劇場を舞う。命あるものの力。

そしてカーテンコール。ここも含めて一作ですよ、大駱駝艦のごあいさつは本当にドラマティックなんだぜ。もう四半世紀は観てるし千秋楽も何度も観ているけど、こんなに「麿ー!!!」て声飛んだのは初めて経験したかも。「ブラボー」もまじってたな。なんだか感慨無量でした……。古株も若手もいるけど、麿さんと艦員たちってまあ20くらいは歳離れてると思う。艦員たちは外部公演にも引っ張りだこで、個々の活動も充実している。成長と成熟と可能性と。未来をまだまだ見てみたい。だからこそ、麿さんにはまだまだお元気でカブいてほしいものです。早くも6月には新作。楽しみにしています。

ところでこの数日間って、SePTに麿さん、トラムに南朋さん出てたのよね。世田谷の劇場はいいとこだぜ!

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で、昨日ちらりと書いたオリンピックの話。前日『逆鱗』を観たあと、野田さんが演出する2020年東京オリンピックの開会式、なんてのを考えていた(これは『エッグ』再演を観たとき妄想したことでもある)。そして今日、大駱駝艦を観乍ら再び思う、「金粉ショーの開会式、最高じゃないの」。

帰宅後、劇場で配布された大駱駝艦の機関誌『をどる』を読んでいると、オリンピックと縁ある記事が載っていた。大駱駝艦恒例の夏合宿と野外公演は、1998年に開催された冬季オリンピックの競技場と関連施設がある長野県白馬村で行われている。


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02月07日(日)
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