ID:43818
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by kai
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■『오케피(オケピ)』
『오케피(オケピ)』@LGアートセンター

2016年観劇始めはなんと韓国公演です、この腰の重いのがよう出掛けたな……。三谷幸喜の『オケピ!』が、韓国のプロダクションで上演中なのです。会場のLGアートセンターは三階構造でキャパ1100、日本で『オケピ!』が上演された青山劇場は1200ですからだいたい同じくらいの規模ですね。ほぼ埋まってました、日本人客もちらほら。ダブルキャストで、観劇日のキャストはこちら。



(クリックすると拡大します)

そもそも今回渡韓して迄この作品を観ようと思ったのは、『新しき世界』をきっかけに惚れ込んだ役者であるファン・ジョンミンさんが演出を手掛け、コンダクター役で出演もするから。ジョンミンさんは韓国版『笑の大学』初演に劇作家役で出演しており、パートナーであるキム・ミヘさんとともに『オケピ!』に惚れ込んで韓国での上演実現に奔走したひとでもあります。制作はそのジョンミンさんとミヘさんが立ち上げた会社、SEM Company。ミヘさんは今作のプロデューサーを務めています。上演迄五年かかったとのこと。基本当て書きのため戯曲の出版はしない(『オケピ!』は白水社からの出版が慣例となっている岸田戯曲賞受賞作品のため、重版はしないという条件で出版された)、当然改変などもってのほかという、作品の扱いにとても厳しい三谷さん。かなりの交渉、準備が必要だったと思われます。今回の上演は戯曲が存在せずDVD化はされた2003年版が基になっていたようですから、上演台本のチェック等細かいところ迄詰めたのではないでしょうか。

さて内容と観客の反応ですが……とてもよかった! 開幕直後、日本と韓国両方のミュージカル/演劇に詳しい知人(在韓邦人)が「グランドミュージカルが主流である韓国の観客に、このノリがどう受け入れられるか…」と言っており、実際一幕目は困惑の雰囲気がありました。ミュージシャンそれぞれのテーマが順に唄われ、最後にはタペストリーのようにひとつの曲へと編み込まれていく序盤のハイライト「彼らはそれぞれの問題を抱えて演奏する」でも反応はほほお、といった程度で拍手も普通。しかしこれは日本で『オケピ!』が初演されたときもそうだった。これはストレートプレイ・ミュージカルコメディだ、と観客が了解する迄が肝です。

幕開けから台詞、台詞、台詞。「いつから唄い始めるんだと思ってるでしょう?」なんてコンダクターが観客に語りかける場面もある。初演の戯曲には「この芝居、ミュージカルにしては唄が少なすぎないかな。台詞ばっかり」なんてオーボエが観客に語りかける場面もある。
(追記:初演の戯曲を読みなおしてみたら、上記のコンダクターの台詞はありませんでした、失礼しました! しかし真田広之にこう語りかけられた憶えはあるんですよね…今となっては自分の記憶が信用出来ない。そして今回の上演では韓国語のリスニングが出来ていないので(…)この台詞があったか定かではありませんが、該当の場面で観客は笑っていたので、おそらく同じような台詞があったのだと推測します。もしなかったら失礼しました! 趣旨としては、歌が少ないミュージカルであるというのを伝えるための台詞がある、という例としてのものです)
演者が根気よく、徐々に観客を惹きつけていく。印象としてはまずトランペットの言動から笑いが増えはじめ、サックスの八面六臂の活躍にドッとわく。二幕目にはもうすっかり演者のペース、手拍子が起こり、歓声が飛ぶ。この頃には台詞の応酬場面もドカドカウケてました。客いじりの場面ではやんややんやの喝采が。自分がいじられなくてよかったとこっそりホッとした…だって言葉が解らない! どぎまぎしてたらこのいい流れを切ってしまう!


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01月09日(土)
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