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by kai
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■『ベテラン』
『ベテラン』@シネマート新宿 スクリーン1

本国では公開週末興行成績で『スターウォーズ フォースの覚醒』を抑えて一位に輝いたと話題の『ヒマラヤ』。主演のファン・ジョンミンは前作『国際市場で逢いましょう』で韓国映画歴代興収2位の動員を果たし、今ノリに乗っている役者さん。そのジョンミンさんの、日本公開最新作『ベテラン』だよー! ギャー面白い! 面白い! 楽しみすぎて期待値かなりあがってたんだけど中盤からそんな期待とかすっかり忘れる程入り込んで観ました。原題は『베테랑(ベテラン)』、英題も『Veteran』。本国でも日本でも2015年公開、監督はリュ・スンワン。ちなみに本国では、現在歴代3位の動員だそうです。すごいな……。

過去に観たことのあるスンワン監督作品が『生き残るための3つの取引』と『ベルリンファイル』だったので、その痛快さにまず驚きました。しかし考えてみればスンワン監督はジャッキー・チェンやユン・ピョウ、サモ・ハン・キンポー全盛時代の香港映画から大きな影響を受けているそうなので、活劇は得意とするところ。と言うかこちらこそがベースなのでしょうね。先述の二作も、アクションシーンがどれも見応えありました。その痛快活劇に社会問題を絡めてくる、その嗅覚とバランス感覚が素晴らしい。

今作のアクションも見応え充分。繁華街である明洞中心地のロケで派手にぶちあげるクライマックス、カーアクションから拳のタイマン勝負迄息もつかせず一気に見せる。善玉である主人公(ソ・ドチョル刑事)がストリートファイト的な泥臭さで攻めるのに対し、悪玉の財閥三世(チョ・テオ)はトレーニングを積んだ格闘技の型と言う対比も面白い。ドチョルの所属する広域捜査隊は皆ちょっと間が抜けていて、しかしいざというときには一致団結、そのザ・チームワークも爽快です。チームの紅一点、ミス・ボン刑事の得意技はジャンプキック。画的にもキマる。しかもそのジャンプキック、不発も含めシークエンスを終わらせる位置に複数回置かれており、展開のよいポイントになっている。演出がとてもリズミカルです。靴や卓上唐辛子瓶と言った日用品が武器になるところは香港映画へのオマージュかな。銃が威嚇にしか使われないところは韓国社会ならではかも。

そしてとにかく悪玉が文字通り悪い。ほんっとに憎たらしい。演じたユ・アインは「ラリってません!」と言ってるその目がラリッてる、みたいな演技がバリバリ決まってました(実際にそんな台詞はありませんよ……)。「後妻のこどもだからって〜」って設定出されても同情出来ないくらい振り切れてた。勇気ある演技でした。

そんなこんなで見どころ満載のアクションにクゥ〜っとなるんですが、そのうえ今作は台詞がよかった。警察署長、チーム長、ドチョルの笑いを誘う言い争いやドチョルと妻の罵り合いの軽妙なこと。ウケるウケる。そして面会室でのドチョルとチェ常務の緊迫感あるやりとり、これにはシビれた……「俺に投資しろ」、するするするーってかしなさいよ! と言いたくなりましたね。しかしそう出来ない財閥の根の腐りっぷりよ……今作が本国で大ヒットしたのは、こんな社会情勢にピタリと合うタイミングだったからと言うのもあるでしょう。こうあったらいいのに、こうあってくれ。摘発してくれ、悪を暴いてくれ。そんな観客の思いに応えた作品だったのでしょうね。とは言うものの、そんな熱狂する観客たちをチクリと刺すかのような場面がありました。ドチョルとテオの殴り合いを誰も止めず、遠巻きにしたまま携帯で撮影する。正当防衛の証拠を残すと言う狙いを表すものでもありましたが、あの大衆の姿にはゾッとさせられました。そういう目端も利いてるなー。

チーム長役のオ・ダルスがまたいい味出してた。ヒット作には必ずこのひとあり(出演作の累計観客数1億人なんですって)、幸運の妖精のよう。そしてマ・ドンソクがカメオ出演してるって知らなかったので、登場したとき素で「あっ!」て声出たよー。客席もドッとわいたよ人気者ね!


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12月22日(火)
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