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by kai
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■dCprG goes on LEVEL XXX『Franz Kafka's South Amerika』tour
dCprG goes on LEVEL XXX『Franz Kafka's South Amerika』tour@Shinjuku BLAZE

『Franz Kafka's South Amerika』リリースツアー初日。このバンドのライヴにうってつけの日になった。7月7日に菊地雅章、8日に相倉久人が亡くなり、いつもそうと言えばそうだが、それにしても重なり過ぎだろうと思っていたところ、当日にこれだ。追悼と有事、全部のせか! みたいな有様。

今夜は特別だった。追悼文の名手と言われるけどやっぱり演奏にいちばん出る。喪失に執着するな、と言う言葉を思い出す。

千住宗臣と田中教順のポジションが入れ替わっていたのは2010年の野音以来か。このときは千住くんが他のライヴに出ていて途中から参加、と言う事情があったためだったと思うが、今回は何か理由があったのかな。昨年秋のリキッドを観られていない(ジェイミー・カラムと被った。そしてそのジェイミーのステージにサポートで駒野逸美が出ていて驚いた)のだが、このときはどうだったんだろう。そして菊地成孔はスーツを着ていた。礼服…喪服だろうな、と思う。新譜からの曲を中心に、3時間弱ガッツリ。

結成当初から傭兵部隊を名乗り、歴代メンバーも腕利き揃い。菊地さん曰く「ポリリズムのリテラシーはバラバラ」でもソロイストはインプロで対応出来てしまう、と言うのが前作が出る迄。その後リテラシーを共通認識させたと言う2013年11月のリキッドで現在のバンドの方向性が決まったと感じた。その編成で初めてレコーディングしたのが今作。フュージョンリバイバルの風を吹き込み、リズムはより鉄壁、高見一樹による楽曲はサルサマナーで、菊地さん、大儀見元、小田朋美によるコロも聴ける。そしてシェイクスピアのテキストはいくらでも深読みが出来る。アンコール前のMCで菊地さんが「ポリティックではなくミスティックなこと」と言っていたことに通じる。

「これ、(エディットなしで)実際に演奏出来るんだ……」と言うアホな感想が第一印象。リハ一回でこれか! もともとの馬力がある演奏家ばかりだからと言うこともあるが、目の前でやられると顎が落ちる。自分の音がモニター出来なかったら、キュー出しをちょっとでも見逃したらあっと言う間に崩壊するであろうと言う緊張感も半端ない。実際危なかったところが数箇所あり、菊地さんだけでなく坪口昌恭が小田さんにキュー出しする場面もあった。菊地さんがカウベルやクラベスを使うところも多く、ソロもあった(他の音が全部消えたときフロア湧いたねー)。最初はこうしてカウントとらないと演奏が出来ないくらい難しいのか? と思ったが(そういう側面もあったかも知れないが)考えてみればこれもサルサの手法だ。こんなハードコアなサルサ聴いたことないべ……呪術か。

そして小田さんの加入、これはホントデカい。最後のピース入った! と言う感じ。坪口さんとのコンビネーションも素晴らしい(と言うかふたりがガチッと合わなければ「JUNTA」「IMMIGRANT'S ANIMATION」辺りはかなり厳しい)、これもサルサで言うモントゥーノにあたるのだろう。千住くんと田中ちゃんもそうだが、同じパートを担当する彼らのやりとりは、プレイヤーにしか感じえない悦楽をシェアしてもらえるようで、観聴きするのは至福でもある。それはdCprGのメンバー全員のことでもあるが。

「Circle/Line」が始まったとき、うっすら予感はあった。願望でもある。恐らく最後に聴いたのはハラカミくんが亡くなった直後のライヴだ。それ以来やっていないと記憶している。同じ年の三月、『I love Poo』で菊地さんは「『Circle/Line』の後に、僭越乍ら私の曲『Hard Core Peace』が続きます」と言った。「安寧なピース等ありません、ピースはハードコアなものです」。大儀見さんと藤井信雄によるパーカッションのブリッジから続く「Hard Core Peace」は、その後大儀見さんと田中ちゃん、千住くんとのブリッジを経てCDJからフェイドアウトする構成になり、やがてフロアから消えていった。今回はどうするのだろう? CDJで繋ぐか、それとも……いや、やるとは限らない。でも、今日やらなくていつやる? 大儀見さんのソロは、果たしてあのエレピのリフに繋がった。「Hard Core Peace」に入った。


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07月15日(水)
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