ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[648354hit]

■『From the Sea』
FESTIVAL/TOKYO 2014 アジアシリーズ vol.1 韓国特集 多元(ダウォン)芸術『From the Sea』@品川区某所(京急沿線)

F/T名物? 遠足(つれまわし)演劇。正しい名称はサイトスペシフィック・ツアーパフォーマンスと言うらしい。過去参加したこの手の作品中いちばん緊張感がありました。何せ役者と一対一、ゴーグルとイヤホンを装着し、視覚と聴覚を制限された状態で70分つれまわされる。最終公演も終わったので、以下ネタバレ込みで書きます。

---

19:00〜19:30出発のチケットを購入。10月22日、集合場所の案内がメールで送られてきました。京急本線、立会川駅。初めて行く場所なので当日は早めに向かい、しばし駅周辺を散歩したりお茶などする。

・立会川駅 - Wikipedia

ネットカフェならぬパソコンカフェと言うところに入った…商店街の感じもなんだかなつかしい雰囲気。坂本龍馬ゆかりの地だそうで、立像などもありました。関連して? 馬グッズもいろいろ売られていた(笑)。うろうろするうち、ゴーグルをした女性とスーツの男性が腕を組んで歩いているのを発見。わっ、あれ、そうだな。なんだか緊張してきた。

時間が来ました、商店街内の受付へ。身軽がいいので荷物は預かりますが、スタートとゴールの場所が違い、15〜20分程歩いて戻って頂くことになります。どうしますか? と言われる。先程見た参加者の様子からして、手ぶらの方がいいなと思ったので終了後戻ってくることにする。ゴーグルとイヤホンの装着、調整、説明を受ける。小雨が降っていたので合羽も着せてくれた。そうだなあ、傘も邪魔になりそうだったものな。さて出発、受付から数軒先のビルのなかに連れて行かれる。階段をあがると右側にちいさな部屋がある。入った右側の窓沿いにベッド、正面にポータブルレコードプレイヤー、その向かい(つまり階段側)に椅子が二脚置いてある。ちいさなテーブルもあったかな、花(確か薔薇)が一輪差してあった。左側にもうひとつ部屋があるようで、襖が少し開いている。その奥は暗闇。椅子に座るよう促され、着席するとゴーグルの蓋を閉じられた。耳に音楽とノイズが飛び込んでくる。身体がかたまる。

しばらくして誰か(スタッフなのだろうが、もはや視界には入らない)からゴーグルの蓋を開けられ、視界が明るくなる。目の前のレコードプレイヤーがまわっている。イヤホンから聴こえてくるのはこのレコードの曲か? 恐らくそれはトラップなのだろうが(確かプレイヤーには配線がなかった)、頭のなかでそう結びつけてしまう。そして頭を右に動かすと、ベッドに女性が横たわっている。こちらに背中を向けている。やがて彼女は寝返りをうち、ゆっくりと目を開ける。視線が合う。しばらく見詰め合ったあと、彼女は起き上がり、隣の椅子に座る。イヤホンから女性の声が聴こえてくる。隣を見ると、女性の唇が動いている。彼女が喋っているのだと気付く。

いーやーこれが怖かった。すっごく長い時間に感じたけど、多分数分もなかったんだろう。狭い空間、初対面の人物とふたりきり、その相手がどう出るか全く予想出来ない状況。この「予想出来ない」ってのが怖い。そして視覚と聴覚を制限され、自分の思うように見たり聴いたり出来ない恐怖。余談だが今思い返すと、たまたまだろうが「女性が背中を向けて横たわっている」あの画ヅラ、『マルホランド・ドライブ』に…似てて……。あのなんとも言えない恐怖感なー…このときちょっと逃げちゃおっかなーと思った……。と言うのも、出発前の説明で「具合が悪くなった場合はその旨伝えて」と言われていたので。そう、これがちょっとした保険になっていた。相手は役者さんで、これは公演だと言う保険。何かあった場合の対処も用意されている。だからこの状態には意外と早く慣れた。と言うか、慣れるようにと腹を決めた。このひとと70分間、パートナーだ。

しかし、序盤はやはり動悸が激しくなり呼吸も浅くなった。パニックになったひともいたんじゃないかな。


[5]続きを読む

11月06日(木)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る