ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[648386hit]
■坂東彌十郎 坂東新悟 親子会『やごの会』
坂東彌十郎 坂東新悟 親子会『やごの会』@日本橋公会堂
満を持しての自主公演! 父子とお弟子さん三人、一門総出です。めっちゃよかった…はー……。番組も考え抜かれたのだろうなあ。この記事によると「まず『関の扉(と)』ありきでいつか新悟とやってみたいなと思っていた。『壺坂』は祖父の十三代目守田勘弥の写真資料が出てきたので」とのことで、十三世守田勘弥所縁の演目から選んだようですが、彌十郎さんと新悟くんふたりの歌、舞、伎が堪能出来るものばかりでした。出ずっぱりのおふたりをガッツリ観られるこの幸せ!
■『鶴亀』長唄囃子連中
---
帝=彌七
鶴=彌風
亀=彌紋
---
唄=鳥羽屋三右衛門、芳村伊千四郎、芳村翔太郎
三味線=杵屋栄十郎、松永忠史朗、杵屋五英治
笛=鳳聲喜三雄
小鼓=望月太左吉
小鼓=田中傳左衛門
大鼓=福原鶴十郎
太鼓=住田長十郎
---
御祝儀物で華々しく幕開けです。この時点で囃子方がガッツリついていておおっとなる。自主公演って音楽はテープ(今だとデータか)だったりするものらしいですが、これは本格的にやるのだなとこちらも身が引き締まる思い。今回六列目のドブ席(久々!)で舞台がすごく近かったのですが、演者の目線の動き迄ハッキリ見える。お三方の緊張の程が窺えました。
■『壺坂霊験記』一幕
---
座頭沢市=彌十郎
女房お里=新悟
観世音=日下部大智(子役)
---
浄瑠璃=竹本六太夫
三味線=豊澤長一郎、鶴澤公彦
---
前回観たのは三津五郎さんと福助さんだった。福助さん、復帰出来ますようにと思う。
温厚な沢市、しっかりもので情に厚いお里。弱気になる沢市を励ます場面、谷へと落ちた沢市を見付けてぐらりとよろめく場面。新悟くんの堂々とした立ち振る舞い、そして自在な台詞まわし! 通して思ったことだが新悟くんホント肝が太いわ。ふたりとも大柄なので夫婦のつりあいもよく、絵になる。
そして終盤、目が開いた沢市が初めてお里の顔を見る場面。こんなに笑うとは思わなかった…そして心がほわりと暖かくなった。彌十郎さんの人柄が滲む、柔和でかわいらしい沢市だった。父子が演じる仲睦まじい夫婦、堪能しました。
子役ちゃんもかわいかったよ。そしてふと思ったが、あの観世音の頭の飾りは電飾な訳だが、電気のない時代ってどうやってたのかしら。そしていつから電飾使うようになったのかしら。
■『積恋雪甘関扉』下の巻 常磐津連中
---
関守関兵衛実は大伴黒主=彌十郎
傾城墨染実は小町桜の精=新悟
---
浄瑠璃=常磐津兼太夫、常磐津菊美太夫、常磐津千寿太夫
三味線=常磐津文字兵衛、岸澤式松、岸澤式明
---
花道で彌十郎さんが身を翻すと衣裳の裾が顔にぶつかりそう、なくらい近い。当然動くと風が起こり、頬に当たる。お香が薫き染められているのかほのかによい匂いがしました。着物の美しい細工がよく見えたのも嬉しかったな。
何度も言うがおふたりとも大柄なので、ダイナミックな立ちまわりと舞が素晴らしく舞台映えする。衣裳に着られないし、おどりも大きい。鶴の舞ですね。そのうえ大伴黒主なんて斧振りまわすもんだからもー、すごい迫力です。
本衣裳での引抜、所謂「ぶっ返り」も観られました。関兵衛が大伴黒主へと姿を変える際隈取りも変わるのですが、斧で顔を隠してご自分で描くんですね。斧のなかに鏡が仕込んであるのだろうか、ヘンな話だがちゃんと描けていることに驚いたりして。
雲の美術がすんごいかわいかった(この記事のAね)。小道具扱いと言うだけある!(?)ゴロゴロって感じの模様もかわいい。
浄瑠璃ものが二作だった訳だけど、生身の人間が役に身体を貸すと言うことが、ふたりを観ることですごくクリアになった。もともとは人形浄瑠璃が主の義太夫狂言。父子で夫婦を演じたり、誘惑し誘惑され廓遊びに興じる男と女を演じたり。役者と言うものの不思議をしみじみと噛み締める。義太夫節によって互いの心情は語られ、その浄瑠璃は物語る。「夫の死骸!」とか唸られるとひいっとなりますよね……竹本六太夫さん、圧倒的でした。何度も汗を拭いてらした。目元も拭っておられたが、あれだけ力入れて謡えば涙も出るだろうなあ。
[5]続きを読む
09月09日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る