ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ユア・マイ・サンシャイン』
『ユア・マイ・サンシャイン』(DVD)
絶賛ファン・ジョンミン特集中。原題は『너는 내운명(君は僕の運命)』、英題は『You Are My Sunshine』。セルDVDにはメイキング等の特典がつくので、こつこつ集めていこうかな、と最初に購入したのがこちらです。そしたらまー、この作品ノベライズやコミカライズも出ていることが判明。Amazon検索の芋づる効果ですね…。遅れてきた韓流状態で、この映画が当時(2005年、日本公開は2006年)どうやって日本で紹介されていたか全く知らなかったので驚いた。純愛ラブストーリーとしてマダム向け展開をされていたとのこと。せっかくなので網羅してみました(笑)。映画を中心に、関連書籍の感想も書いてみることにします。
と言うのもこの作品、単なる泣けるラブストーリーとは一線を画す内容で、かなり考えさせられたのです。
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フィリピンでの嫁探しツアーに失敗した畜産農家のソクチュン。自分の牧場を経営するのが夢の彼は、こつこつ働き、お金を貯めています。同居している母親に嫁はまだかと嫌みを言われても気にする様子はなし。話し相手はだいじに飼っている牧場と言う名の牛。気の優しい真面目な男です。
ある日、ソクチュンはスクーターですれ違ったウナと言う女性にひとめ惚れ。ウナは最近“喫茶店”に新しく入った娘らしい。ソウルから来たと言う彼女の洗練された美しさに、ソクチュンはすっかり参ってしまいます。出前と称して売春業務も行っている喫茶店で働くウナをソクチュンはあれこれ心配しますが、女性に対して奥手なのでうまく好意を表現出来ない。ウナはある事情から男性も愛情も信じられない状態になっており、ソクチュンの不器用な好意を素直に受け取ることが出来ません。
衝突の日々が続きますが、ソクチュンがそれはまあ粘り強い(笑)。台詞にもありますが、ストーカーと紙一重です。しかしそんな彼のあまりにもまっすぐなふるまいは、ウナの心を徐々に開いていきます。とある事件をきっかけに、ふたりはお互いの正直な気持ちを受け入れる。結婚して幸せいっぱいの日々を過ごすふたりでしたが……。
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いやー重い。HIVへの認識の低さ、偏見、差別。韓国における家族の繋がり、家長=長男の権威の強さ。罪に問われるのはウナひとりってとこもつらいし、ウナの元旦那をはじめ、風俗来て暴力ふるう男、避妊拒否する男と言った表沙汰にならない悪人がいるのもすごくいや。ウナに大怪我させた男だってきっと捕まらないもんね……。胸糞悪いわー。
しかし弱い立場の人間が晒されるのは、こういった直接的な暴力だけではありません。この作品には、力なきひとたちの残酷な姿が描かれている。
「お金持ってるんでしょ」と言われるソクチュンですが、それはつましく暮らしている結果で、有事となるとだいじにしていた牛を売らなければならない程度の蓄え。伝染病で豚を大量に処分しなければならなくなったりと不安定な職業でもあります。ちいさな村では悪い噂がすぐに広まる。生業を営む土地を離れることも出来ず、その狭い世界で生き続けていくのは容易なことではありません。ちくちくと排除の檻に閉じ込められて行く、その様子には背筋が寒くなる。それは当事者だけでなく家族にも及び、ふたりは最も近しい共同体からも切り捨てられることになります。
ソクチュンのお母さんがまたすごくいいひとだったんだよね。喫茶店に勤めている嫁なんてと最初は反対するけれど、息子が選んだ女性ならと結婚を許してくれる。ウナが優しくよく働くいい娘だと言うことをちゃんと自分の目で確かめると、彼女の出自に拘らず仲良くなる。彼女の身体のことを知っても掌を返すようなことはしません。ソクチュンに「母さんなんて要らない」と迄言い放たれても、彼女は息子とその妻を案じ、最終的には彼らの気持ちを尊重します。ソクチュンの兄(家長)と訪れた拘置所でのやりとりに、お母さんの人柄がにじみ出ていて胸が痛くなった。状況的にお兄さんのことも責められないだけにね……。
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04月01日(火)
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