ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■スガダイロー VS 飴屋法水『瞬か』
スガダイロー 五夜公演『瞬か』@あうるすぽっと
飴屋法水ウィーク、二本目。一週間で飴屋さんの作品を二本観ると言うのは相当消耗する。嬉しくもあり、苦しくもあり、そしてやっぱり嬉しい。それにしてもこの異種格闘技っぷり…と思えば、BOYCOTT RHYTHM MACHINEの方が絡んでいたのだった。と言う訳でデュオとか×とか&ではなくVersusと表記したい、スガダイロー VS 飴屋法水。
全五公演の対戦相手はダンサーが主、と言うか活動の基点がダンスの方ばかり。このラインナップで飴屋さんの存在は異質だ。彼の活動が身体表現と切り離せないことは周知の通り。しかしいちばん予想がつかなくもあった。この日しか観られなかったので、他の組み合わせはどんなものになったのか気になっている。特にcontact Gonzo、観たかった。
リハも別、顔を合わせたのも当日で、初対面だったらしい。ゲストが提案をし、本番でそれに初めて接したスガさんが反応する、と言うスタートラインはあった。その後は完全ガチンコのインプロ。ステージ上の下手にスガさんが演奏するグランドピアノ、中央から上手にかけてピアノが五台(アップライト×3、グランド×1、電子ピアノ?×1)+ちいさなおもちゃのピアノが二台。これらには布が被せられていた。
マントを羽織ったスガさんと、普段の佇まいの飴屋さんが登場。スガさんの髪はモヒカンに近いツーブロックになっていた。長髪をまとめ、激しくピアノを弾く印象があったのではっとする。飴屋さんのマイクパフォーマンスが始まる。マイクパフォーマンスと言う用語とは程遠いちいさな声で、ボソボソと話し始める。ピアノの歴史、名前の由来。日本に伝わった年代、YAMAHAとKAWAIの関係。鍵盤の数。ピアノフォルテと言う名前から何故フォルテだけが消えたのか。何故ピアノだけが残ったのか。ピアノは弱い、フォルテは強い、ピアノは強い音も出せるのに。「ピアノ、弱く。フォルテ、強く。僕は何故ピアノと言うのか解らない」「だって、ピアノは強い」。スガさんを指し「彼はピアノを弾く。僕はピアノを弾かない」。知ってましたか、保育士や小学校の先生になるには、ピアノが弾ける資格がいるそうです。僕は保育士、先生にはなれない。「彼、ピアノ弾く。僕、弾かない」。いつの間にかスガさんの演奏が始まっていた。
やがてマイクを置いた飴屋さんが、ピアノを覆っていた布を取り払い始める。そのなかの一台にふわりと飛び乗る。身が軽い。着地の音が全くしなかった。柔術のようにピアノに身体を接触させ、或いは軽快に飛び移って、五台のピアノ上を移動して行く。ぴったりとピアノに張り付き、鍵盤上の蓋を開けたり閉じたりし始めた頃から音に強弱がつき始める。勢い余って手を挟んでしまったところもあった。開閉のバン!と言う音は連続しては鳴らされず、一定のリズムは多分本人にしか把握出来ていない。ピアノから離れてまたマイクを持ち「彼はピアノを弾く。僕はピアノを弾かない」。そしておもちゃのピアノの鍵盤を軽く叩く。これは飴屋さんにとって、弾くと言う行為ではないのだろう。次の行動が、直前になる迄読めない。スガさんが激しい演奏をしているときにいきなり飴屋さんが話し始めたりするので、PAのバランスをとるのは難しかっただろう。音響はzAkさんだったが、その辺りの対応は見事だった。
飴屋さんがピアノの寿命について話し始めた辺りから、なんとなくこれらのピアノの行く末が感じられてきた。ピアノの寿命は百年。ここに置かれている五台のピアノは、寿命を迎えたものたちなのだ。或いは役割を終え、演奏者から必要とされなくなったもの。上手袖に一瞬入った飴屋さんが、ハンマーを持って帰ってきた。やはり、か。
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11月01日(金)
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