ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■千葉雅子×土田英生 舞台製作事業『姐さん女房の裏切り』
千葉雅子×土田英生 舞台製作事業『姐さん女房の裏切り』@サイスタジオ コモネA
原案千葉さん、作・演出土田さん。チラシの紹介文によると「長く上演されるレパートリーを創作する試み」で、「来年以降はリ・クリエイションを行いながら各地方での上演を行うことを目指して」いるとのことなので、この作品が今後改訂を繰り返され上演されていくと言うことかな?それにしてもなんてえの、宣美からもうキてた。まさこの姐さん!ひでおの鉄砲玉!撮影のロケーション(工業地帯!)、シチュエーション(うどん!)、ふたりのメイクから衣裳から、うわわわわ観たい観たいですってなものです。まずここで分かれそうですね好みが…私はすごく観たいと思った!思った!(力説)ビバ榎本太郎さんの宣美!写真は引地信彦さん!
と言う訳で小竹向原迄出掛けて行った訳ですが、ここすごい独特な雰囲気の街なんですよね。地下鉄から地上にあがりまず視界に入るのがトンネル。振り返るとまたトンネル。えっ、あれっあれっ?一瞬どっちがどっちか判らなくなる。まずここで方向感覚が狂わされます。小竹トンネルと向原トンネルだそうで、やはり名物?なのかご当地ケーキ迄あるんだぜ…(小竹向原トンネルロール)。再び振り返れば団地。公園。近距離に図書館がふたつある。ひとは沢山いる筈なのになんだかひっそりした感じ。開場より随分早めに着いたので駅周辺をぐるりと散歩、図書館で本を読み、スーパーで買いもの迄してしまったんですが(いやしかしホント店舗、地域によってスーパーって品揃え違うよねー)、だんだん「ここが、あのふたりが暮らしている街か〜…」なんて気持ちになってくる。チラシで紹介されていたストーリー、「警察と組に追われる姐さんと鉄砲玉が隠れて暮らしている街」にイメージを重ねてしまいました。ここで再び思い出す、「来年以降はリ・クリエイションを行いながら各地方での上演を」。地方都市を転々とする、姐さんと鉄砲玉の逃避行。
果たして観たいと期待したものが観られました。最高じゃないの……。
タイトルからして姐さんが裏切るのは判っているので、そうなる経緯、登場人物の感情の変化を窺い乍ら観て行くことになります。姐さんは鉄砲玉を警察に売るのか、あるいは組に売るのか?と言うところから、そもそもなんで裏切るのか?とドキドキし乍ら見守って行く訳ですが、その経緯ってのがまー長閑やら間が抜けているやら情けないやら。逃避行の果てのぐだぐだです。追われている鉄砲玉は仕事が出来ない、出歩けない。なのでぶっちゃけ家でごろごろしてるヒモなんですが、その後ろめたさやら、一緒に逃げた姐さんの真意を探りたいやらでもー感情が捩じれまくってひねくれまくって大変。もはやかわええなおい。そして面倒くせえな(笑)。対する姐さん、それを受け流したり突然「姐さん」に戻って恫喝したり甘えさせたり突き放したり。なんだかんだで鉄砲玉、姐さんの掌でいいように転がされてます。そしてスパッと潔い幕切れ。約70分と言う上演時間の短さといい、キレのいい短編小説を読んだあとのような気持ちよさでした。
部屋の小道具がまたいいの。古びた鏡台、敷きっぱなしの布団、鉄砲玉が発売日を楽しみにしているクロスワードパズルの雑誌。そして多分部屋にはテレビがない。板張りの床が暗闇へと伸びていく、パースペクティヴな八百屋舞台。客席からだと舞台そのものが空中に浮いているようにも見え、登場人物がで過ごしてきた不安定な時間を思う。まるで世界でふたりきりだったようなあの頃、倦怠が澱んだ夜に沈んでいく今。舞台つきあたりには工業地帯の画像。ああ、こういう街にいるんだなと言うイメージか、と思うも、部屋のカーテンを閉める動作とともに画像が消える。部屋の窓から見える風景でもあったのだなと気付く。奥村泰彦さんによる美術、すごくよかったです。
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06月07日(金)
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