ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備を』
シティボーイズミックス PRESENTS『西瓜割の棒、あなたたちの春に、桜の下ではじめる準備を』@世田谷パブリックシアター

ラジカル・ガジベリビンバ・システムには間に合わなかった世代です。と言うか、当時田舎で宝島に載ってる記事を読んで憧れていた世代です。私が上京して芝居を観始めたとき、シティボーイズは三木さんと組んでいて、宮沢さんは遊園地再生事業団を旗揚げしていました。

宮沢さんが書いた所謂“コント”は映像、あるいはテキストでしか知らない。しかし遊園地再生事業団や他の演出作品を実際に観るようになり、イメージ連鎖を喚起し笑いと恐怖を自在に行き来する台詞、洗練された情景が立ち上がる舞台空間に魅了されていきました。『スチャダラ2010』のラストシーンは今でも鮮烈に憶えています。劇中SDPの三人が野球をする。束ねられたかるたを投げる、打つ、かるたが散らばる、途端にかるた大会が始まる。同じ行為がラストシーンで繰り返される。ボールに誂えられたものを投げる、打つ、……それはかるたではなく花弁の塊で、打ったと同時に目の醒めるような赤がぱっと散る。間髪入れずに暗転、暗闇の視界に赤い花弁の残像が焼き付く。涙があふれる。かつて大笑いした光景は、かるたを花弁に変換し繰り返すことで予想外の感情を沸き起こしました。同じ行為が繰り返される間に、死者や、精神を病んで遠くへ行ってしまった者たちとの対話のシーンが挿入され、世界に横たわる寂しさと対峙し乍らどう遊び続けるか、と言う意識を掘り起こされると言う前兆があってのことでした。こんなふうに感情を揺さぶられるとは。

(追記:今気付いたが『スチャダラ2010』はコントだったか。でもこれ、宮沢さんは構成演出で作家陣は他にいたんですよね。クレジットはなくともアイディアを出したところはあるのでしょうが…ラストシーンがあまりにも印象的で、コントだと言うことを忘れていた)

ほぼ四半世紀を経て、シティボーイズと宮沢さんが組むと言う。あの笑いと寂しさが紙一重の、美しい世界が観られるだろうか。楽しみ過ぎて前夜は夢に宮沢さんが出てきました(笑)何故まことじゃないのだ…と思いましたが……普段からここを読んでくださっている方はご存知でしょうが、わたくしシティボーイズのライヴ行くときは気合い入れ過ぎたメイクが戦化粧のようになってしまうくらいまことが好き過ぎるのです。何故まことのこととなると中高生マインドをこじらせたような「好き!」になってしまうのか未だに自分でも謎です。

どんどん話が逸れていく。爆弾低気圧に怯え乍ら三軒茶屋へ向かいました。

席は三階最前どセンター。着席してすぐ、目の前に拡がる光景に見入る。思えば宮沢さんの演出作品をSePT規模で観るのは初めてですし、SePTの独特な劇場空間をどう使うのかにも興味と期待がありました。果たして「美しい世界」が、劇場サイズとキャパシティに最適な状態で用意されていました(となると他の劇場でも観てみたくなる訳ですが)。林巻子さんの美術、高橋啓祐さんの映像、高田漣さんの音楽により、確固とした美意識をまとった舞台空間。高い天井から降ろされた巨大な白い布はステージの四分の一程の幅だろうか。ぴんと張られたものでなく、舞台上へとドレープを描いている。布がない空間から見える舞台のその奥は、照明により顔色を変える。布はスクリーンとしても使われる。映像は近年の恒例だったエピソード毎の転換用スケッチとは違い、あく迄劇中の美術として扱われる。幕のサイズ感にヤラれ、その幕と幕からはみ出し増殖していく映像の拡がりにヤラれる。壁面、幕面、その幕に載る映像。二層にも三層にもなる舞台。そこへに出演者たちがノイズを加えていき、またその層が増殖する。


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04月06日(土)
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