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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ザ・タウン』
『ザ・タウン』@早稲田松竹
念願叶ってのスクリーン鑑賞!『アルゴ』が公開されたとき、よしこれでベンアフ作品二本立てが出来るぞ、早稲田松竹辺りで…『ゴーン・ベイビー・ゴーン』は日本では劇場公開なかったから、これと組み合わせてもいいよねえなんて思っていたのでした。いやーん嬉しい、早稲田松竹ありがとー!
GGもPGAもSAGもDGAも獲得、現在賞レース快進撃中の『アルゴ』。日本でも改めて注目が集まっているようで、異例の規模でのリバイバル上映も決定(て言うか最初の公開館数が少な過ぎたんだよ……)。その影響もあったか、立ち見も出る盛況でした。気になるのは、本国では悪者イランに一泡吹かせたった!アメリカ万歳!みたいな風潮で盛り上がっているような感じがするとこで、そこは注意深く一歩退いて描いていると感心していただけに、ちょっと心配ではあります。
とりあえず今回は『ザ・タウン』のみを観ることに。上映順は『アルゴ』→『ザ・タウン』。『ザ・タウン』から入る場合既に『アルゴ』から観ているお客さんがいる訳で、その時点でどのくらい席が空いているか判らない。早稲田松竹さんのツイートを参考に、早めに出掛けて整理券をもらうことにしました。早稲田松竹で整理券もらったの初めてだ…あのーこれ、作品自体の注目度もあるけど、ここんとこのジェレミー・レナー人気も影響してると思う……。『ザ・タウン』をスクリーンで初めて観るひと、結構多かったんじゃないかな。まんまと私もそうですが。いやしかしジェレミーのおかげでこんなに入れ込んでしまう映画がまた一本増えたよ。オールタイムベストに入る勢いです。『ザ・タウン』をDVD鑑賞したときの感想はこちらにちらりと書いたのですが、スクリーンで観て感じたことなど含め改めて感想を。ネタバレしてます。
DVDでは劇場公開ヴァージョン→エクステンデッドヴァージョンの順で観ましたが、個人的には劇場公開版の方が断然好きです。説明のさじ加減が丁度いい。エクステンデッド版は、コメンタリーで監督が「ここは説明が過ぎると思ったのでカットした」と言っている箇所が結構ありました。確かに、副支店長を見舞うクレアに付いていったダグが罪悪感を感じるシーンや、現金輸送車襲撃後のダグたちと鉢合わせした警官が彼らを見てみぬふりした理由、ダグがクリスタを侮辱するような言葉をジェムに投げかけるシーンは、補足として観る分にはいいと思いましたが、本編に残っていたら冗長に感じたと思います。「役者も熱演しているし、そんな彼らの出番を減らすのはつらい。自分も好きなシーンだし」と言いつつ、何より公開されたときの時間の長さや話運びのテンポを重視して、これらのシーンをカットしたところに監督の冷静な判断、作品への献身を感じました。
かくして説明のない部分―余白に想像力を掻き立てられる。母親を捜す幼いダグを、真実を知るあの花屋や“タウン”の大人たちは黙って見ていたのか。「揃いも揃って親父にそっくりだな」と言う花屋の言葉から連想される、代々受け継がれるタウンの仕事の根深さ。そしてバッグに入っていたオレンジ。クレアはあの地へ向かうだろうか? 今迄決してその線を越えなかった殺人をもダグは犯してしまった。彼はあの後捕まるだろう、そのときクレアはどうするだろう……。“I'll see you again, this side or the other.”人生はやりなおせるか、消せない罪をどう背負っていくか。『ゴーン・ベイビー・ゴーン』にも『アルゴ』にも、アフレック監督作品には、人生の苦さと登場人物への優しい視線がある。
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02月03日(日)
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