ID:43818
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by kai
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■七月大歌舞伎 夜の部
七月大歌舞伎 夜の部@新橋演舞場
二代目 市川猿翁 四代目 市川猿之助 九代目 市川中車 襲名披露
五代目 市川團子 初舞台

『将軍江戸を去る』『口上』猿翁十種の内『黒塚』『楼門五三桐』。襲名披露観劇はこれで一段落、しかしもう一度『ヤマトタケル』観たいな…でもスケジュール的にも金銭的にも無理ー(泣)せめて舞台写真が入ってからの筋書きを買おうかと思っております(21日販売分から入るそうです)。

今月の襲名披露公演には市川宗家のおふたり、團十郎、海老蔵が参加。『将軍江戸を去る』は慶喜=團十郎、伊勢守=海老蔵、山岡=中車。徳川最後の将軍が江戸城を明け渡した後、水戸へ立つ迄の出来事が描かれます。2008年に歌舞伎座で観て以来(このときの上演は慶喜=三津五郎、伊勢守=彌十郎、山岡=橋之助)のこの作品、ちょっと地味目乍ら結構好きなのです。「江戸を去る」ため、慶喜が花道ではなく、舞台奥へと退場して行くところにもしみじみさせられる。早朝を表現する照明も印象的ですが、劇場そのものの構造や、客席用の地明かりも影響するのか、歌舞伎座と演舞場ではその照明がかなり違って見えました。歌舞伎としては新しめの作品で、台詞も現代語調に近い。六月の『小栗栖の長兵衛』に続き、中車さんが演じる歌舞伎作品としても気持ちよく観られました。勤王と尊王は違うと熱弁を揮い、命を懸ける覚悟で慶喜と向き合う鉄太郎の心情は、歌舞伎と向き合う中車さんの覚悟と重なる趣もありました。声が相当荒れており、喉が心配ではありますが、そのしゃがれ声でも言葉はきちんと伝わるのが流石。

口上は猿之助、中車、團子に團十郎、海老蔵。團十郎さんが進行。あのねー海老蔵さんの口上はホント面白いねー。天然って強いな……(暴言)。フランス興行の話や、『ライオンキング』を一緒に観に行って、既に二十回以上観てるのに初めて観るかのようにわあ〜☆ってなってる猿之助さんの話等で笑いを誘っていました。

そして舞踊劇『黒塚』。この作品の歴史や三代目が初めて踊ったときの経緯等、いろいろ話を聞いてはいましたが、実際に観るのは初めて。四代目の『黒塚』初役を目撃出来た、と言う時点でもううわーんて感じでした。いやこれすごい好きですわ私…また酷い話なんだけどー!『ヤマトタケル』と言い、家に縁のある作品を襲名披露で、と言うのは判るがなんでこー可哀相な話ばかりなのー!(泣)猿之助さんは陰がある人物が似合うね……。そういえば襲名に際してのコメントで、「三代目が太陽ならあなたは月だ、と言われた」と言っていたなあ。

いろいろあった末鬼女に成り果てた老婆岩手が住む安達原の荒野に、名僧の一行が通りかかる。名僧祐慶に諭された岩手はまたひとを信じていいかも!と、彼らをもてなすため薪をとりに出掛ける。その際正体を知られないようにと、決して閨の内を覗くなと言いおいて出て行くんですが、こういうときって必ず覗くじゃん!そういうひといるじゃん!わー、強力のバカーーー!!!俗人ーーー!!!そうとは知らない岩手は薪を拾い、月の明かりを見て和み、その影と戯れ、あーいろいろあったけど私、今心が穏やか!てなってたところに逃げて来た強力と鉢合わせ。うわーバーカー!もういや!強力のバカ!私、鬼女ってバレた!とさとった岩手は強力にドーンとかバシャーンとかするんですが(なにこの表現)、命は奪わないとこがまたせつない!そして最後には祐慶の法力に押し切られて姿を消すんですよー。うわああああん!!!

はー、アホみたいな説明ですがホントよかったですよよよ。岩手の穏やかな所作、月の光とその影と戯れる無邪気な姿は、娘時代の彼女を彷彿させる。しかし鬼女の正体を現してからの強力との対峙、祐慶、大和坊、讃岐坊に囲まれ苦しむ立ち回りの壮絶さ。この対比が素晴らしかった。あんなにたおやかで上品なおばーちゃんがこんなになる程のことがあったんだよー!と納得させられた……。岩手に過去何があったのか、と言う具体的な説明はシンプルな台詞で語られはしますが、それがどれだけ壮絶な経験だったか、彼女にどれ程の悲しみと苦しみを与えたかは踊りで伝えられるのです。いやもう踊りなのに(踊りだから?)涙が出ましたよ。言葉以外でしか伝えられないってものはあるよ!


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07月16日(月)
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