ID:43818
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by kai
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■六月大歌舞伎 夜の部『ヤマトタケル』
初代 市川猿翁 三代目 市川段四郎 五十回忌追善
六月大歌舞伎 夜の部 スーパー歌舞伎 三代目猿之助 四十八撰の内『ヤマトタケル』@新橋演舞場
二代目 市川猿翁 四代目 市川猿之助 九代目 市川中車 襲名披露
五代目 市川團子 初舞台

お初のスーパー歌舞伎です。お、お、おもしろかった……。3S(スピード、スペクタクル、ストーリー)とはこれか、と。現代語の台詞、展開のはやさ、たっぷりとしたエンタテイメント性。生演奏に限らない音楽、スピーカーを通す効果音、ストロボ等も使った派手な照明。思わず新感線のいのうえ歌舞伎を思い出してしまったのですが、奇しくもスーパー歌舞伎といのうえ歌舞伎が始まったのは同じ1986年なのですね。初演時イロモノ扱いされただろうことは想像に難くない。どちらがより、と言う訳ではないのですが、殊に歌舞伎の世界では、相当の逆風もあったかと思います。

それが今では多数の支持を得、再演が待ち望まれる数々の作品を生み出している。スーパー歌舞伎をジャンルとして確立させた三代目市川猿之助丈と、彼が倒れた後留守を守り続けた右近さんをはじめとする猿之助一門の方々の結束と献身に、心から敬服した次第です。右近さん演じるタケヒコが登場したとき、万雷の拍手が鳴り響いたのにはジーンときました。そして四代目猿之助丈!三代目の『ヤマトタケル』の映像をちらちら観てから行ったのですが、もうそっくりで……声、言い回し。「(猿翁丈には)自分の身体を使って好きなことをやってもらいたい」と言ってたけど、こういうことかと……いろんな意味で鳥肌が立ちました。口上で「歌舞伎のために命を捨てる覚悟」と仰っていましたが、その言葉の重みにひしと感じ入りました。「先代を超えるのは無理。新しい猿之助のファンを獲得していく」との言葉も思い出し、自分は四代目のこれからを観ていくのだなあと思いました。

そして今回の襲名披露に際してこの作品が選ばれたことに、宿命と言うものの意味を考えずにはいられませんでした。父に認められたい、愛されたい一心で戦い続ける息子の物語。そしてその父=帝を中車さんが、父子和解の象徴、ときを受け継ぐワカタケルを團子くんが演じていると言うこと。中車さん、グッとくる熱演でした。團子くんも堂々としたもの。大歓声を受けていました。

と言う訳でいやはやすごかった、ストレートプレイ、ミュージカル、バレエ、京劇、殺陣…どんだけの要素が詰め込まれているかって言う。あの、のんびり観てられません。その分なんてえの、客席が集中してると言うか、観る以外のことが出来ないと言うか、歌舞伎の客席にありがちな、喋ったり動いたり袋ガサガサ言わせたり、てのがない!(笑)ハラハラドキドキほろりの連続のストーリーな上、見せ場の派手さが半端ない。熊襲の戦いの場面なんてどんだけ樽投げるのって言う。伊吹山で雹に打たれる場面も、どんだけ雹飛ばすのって言う…この辺り一歩間違えば大ケガなので(樽も雹もそこらじゅうに転がっているので、うっかり踏んだりしそうで)どうするのかなと思ったりし乍ら観てて、その処理の絶妙さに感心したりする面白さもありました(笑)。一転、タケルが山神の化身である猪(この猪がちょー格好いい。白毛に蒼い斑紋)と戦う場面ではほぼ裸舞台、奥行きをフルに使ってタケルと猪の躍動を見せる。猿之助さんの華奢な身体つきが身の軽さとして映り、若者タケルの俊敏さ、しなやかさが際立つ場面の数々。炎の場面も迫力、京劇役者さんたちの身のこなしにどよめきと大歓声。


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06月09日(土)
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