ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[648636hit]

■『2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」』
さいたまネクスト・シアター『2012年・蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」』@彩の国さいたま芸術劇場 インサイド・シアター

終演後即リピートしたくなり、すごい勢いでスケジュール調整中。蜷川さんの高いハードルに役者たちが死にものぐるいで挑んでいます。

確かにスキルの拙いところはある。滑舌が甘かったり、絶叫が続いて台詞が伝わりづらかったり、蜷川さんが手練の役者たちにあてたらもっとキマるだろうなと思う身体表現もある。プロの役者としてやっていくには、連日続く公演の平均値を揃えるため、コンディション整備等の配慮も必要だろう。しかし逆に言えば、その日そのときで使い切っても構わないと言う程力の入った表現は、今、この場でしか目撃出来ないものだ。そして彼らなら、このスケジュールを若者ならではの体力で押し切れる筈だ。スキルは後からついてくる。いくらでものびしろがあるのだ。余裕なんてあるかボケー!と必死になっている役者たちの姿は「父を失った若者たち」を描く『ハムレット』にズバリ重なる。この作品には、若者たちの激しい焦燥を受け止める器がある。

そんな役者たちに、他の公演と変わらないプランとハードルを与えた蜷川さん。美術、照明、音響、衣裳に彩られた空間は、早くも今年のベストに入るものと言っていい程のクオリティです。驚いたのは、これが若手スタッフたちの仕事だったと言うこと。これ迄「贅沢!」とすら感じるベテランスタッフを配して来たネクストシアターですが、そういうエキスパートたちが手掛ける現場に付いていればいくらでも吸収出来ることがあるだろうし、それを反映させる欲求と要求が発生しない訳がない。それは役者も同様で、こんな環境で芝居が出来る役者たちは本当に恵まれているし、だからこそ本気で挑まずしてこの場にい続けることは出来ないだろう。

若者たちと、彼らと真っ向からぶつかる演出家。果たしてそこにあったのは、心が沸き立つような舞台でした。これだ、こういうのが観たかった。舞台を観に行く理由と言うのはいろんなものがある。名作を観たい、巧い芝居を観たい。自分は、生身の人間が目の前で発する、体裁を凌駕してしまうような思いの強さ、無限の可能性を観たい。ここにはそれがあった。以下ネタバレあります。あ、これから行く方は(ってもうすぐ終わっちゃうけど!)開演5分前には着席しておくといい!

さい芸大ホールのステージ上に作られたインサイド・シアターはネクストシアターのホームとも言える空間で、舞台をコの字に囲む客席配置はいつものこと。しかし今回それにひとひねりありました。ステージ床面に被せられた黒い幕が開演直前に取り払われると、そこは二層になっている。アクリル床で仕切られた地下は、出番前の出演者たちの楽屋と言う設定。役者たちが着替えやメイクをしている。蜷川さんもそこにいて、役者に声を掛けている。アクリル床は四箇所開閉出来るハッチになっており(追記:オフィーリアが埋葬される際、中央のアクリル床も開く。ここはハッチになっていない)、可動式の階段がシーンに応じて設置される。やがて蜷川さんが客席に現れ席に着くと、役者たちが立ちあがり正面を向いて一礼する。ハッチがガチャッッッ!!!と大きな音をたてて開かれ、同時に物語の幕が開く。毎度乍らツカミが見事。

地下では民衆が、幸福なオフィーリアとレアティーズが、狂ったオフィーリアが走り回る。そしてオフィーリアはそこに埋葬される。威厳を示すクローディアスを、民衆は下界から見上げる。本来のステージの奥行きも使い、立体的な視界が開ける。遠くへ去っていく一団、遠くからやってくる一団。自由、そして逃亡への道を得たかのように走る彼らを見送る、身震いするような体験。


[5]続きを読む

02月25日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る