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by kai
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■『CLOUD ―クラウド』上演台本
7月22日に『CLOUD ―クラウド』の上演台本が公開されました。公式サイトからPDFファイルでダウンロード出来ます(『CLOUD』(「download」をクリック))。公開に際してのスズカツさんのコメントはこちら→・-suzukatz-cloud『CLOUD/上演台本公開について』

嬉しい。有難うございます。

536KBのファイル、出力すると44枚の紙の中に、あの世界の設計図が記されている。

個人的に興味深かったのは、テキストを通して、実際に舞台で観た際のリズム感とタイム感の記憶が掘り起こされると言うところ。例えば「#プロローグ」〜「#1」、暗転寸前から台詞の第一声迄に、“テキストに書かれていない”さまざまな情報と時間を思い起こし乍ら読むことが出来るのだ。

空から降ってくるような街のノイズ、心地よい速度のグラデーションで暗くなっていく視界、音楽が入ってくる迄の身体が浮きあがるような完全暗転の数秒感(多分2秒もない)、その直後耳に飛び込んでくるだけでなく音の粒子が頬にぶつかった感じすら覚える大音量のサウンドと、光による色彩で鮮やかに染まる空間、中央に歩み出るひとりの人物の佇まい、向かい側にゆったりと現れるもうひとりの人物の穏やかな表情、“I know a girl who's like the sea / I watch her changing every day for me”と言う歌詞、新たに現れた対角線上に立つスーツ姿のふたりの人物、“One day she's still, the next she swells / You can hear the universe in her sea shells”と続く歌声。“No, no line on the horizon, no line”のフレーズのあと弾かれたようにステージに駆け込み、踊るようにクラウドをつかまえていくスーツのふたり、“I know a girl with a hole in her heart / She said infinity is a great place to start / She said "Time is irrelevant, it's not linear"/ Then she put her tongue in my ear”、一歩退いた場所から彼らを見渡すひとりの謎めいた人物、繰り返される“No, no line on the horizon, no line”のフレーズ、高揚する音楽。それらが断ち切られ、軽快な第一声が投げ入れられる。「朝!」

約2分40秒。このシーンを説明するト書きは26行、テキストを読むだけなら十数秒と言ったところ。目で文字を追っているその十数秒の間に、脳内ではこれだけの情報と時間が高速で再現されるのです。このタイムラグが面白い。ここらへん、オガワの記憶にあるイタバシとウサミの「ノッキングやスローモーション」を思い起こさせる感覚でした。

そして「#1」冒頭。「朝。トースト、ソーセージ2本、アメリカンレリッシュ&タバスコ、ラズベリージャム、有機豆乳、野菜ジュース、エスプレッソ」…記号的な単語の羅列。何が始まるのか?彼は何について話しているのか?一瞬このシーンをどう捉えようかと、観客は台詞を発している人物を注視し言葉に聴き入る。……そして「ポトフなんか作れるんですか?」ダイアローグが始まり、観客はストーリーにランディングする。

……濃いーわ!情報多いーわ!「イタバシとウサミ、ゴミ袋を扉の外に運び出す」と言うたった21文字のト書きひとつとっても、そこからあれだけ芳醇な情景が立ちあがると言う舞台のマジック。「#2」終盤のDD使用中のオガワの挙動にしても同様だし、「#3」のテキストの並びをあの声、あのリズム、あのテンポで展開するMCオガワとMCアマリのやりとりもそう。台詞を叫ぶか、呟くか、と言う演者の選択からしても、その多様さは限りがない。

ごく簡潔に記されたこのスクリプトからあれだけの舞台空間をたちあげるカンパニーの想像力と、それを具体的に形にする実力を思い知らされました。これ100分前後で助かったわ…長かったらもちませんて集中力が。空調が寒いとか椅子が小さくて腰にくるとかして身体からくずおれるわ……(笑)とは言うものの、ダイアローグに比重があるシーン、演者の身体能力に注目するシーンというように、情報提示の振り分けと緩急が絶妙なのです。そのピースのハマりっぷりには爽快感すらある。そしてどこを、何を選択するかの判断と、それ以外のものをいかにノイズとして舞台上に残すかあるいはカットするか、は演出家のキューになるのでしょう。そして出来上がったのがあの舞台。キャースズカツさんカッコ☆E!


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07月27日(水)
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