ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『パブリック・ドメイン』
フェスティバル/トーキョー『パブリック・ドメイン』@池袋西口公園

ロジェ・ベルナットがコンセプトと演出を手掛けたこの作品は、観客が出演者になります。と言う訳で出演してきました。観客参加型の演劇は少なくありませんが、観客のみで演劇を進行する作品は珍しい。参加者=出演者は約150人、上演時間は一時間強。

立ち入り禁止区域等指定していない公園のど真ん中でやるので、通常で言うところの観客はその公園に居合わせたひとたちになります。何やってんだとずっと見ているひとが結構いた。あと公園周辺が根城らしいホームレスのひとたちも見てたなー。上演途中、披露宴の帰りか引き出物っぽい紙袋を持ったいい気分の集団がなんだなんだ何やってんのと笑い乍らエリアの真ん中を横切っていくハプニングもありました(笑)。

会場である池袋西口公園に着くと受付があり、名前、電話番号と交換でヘッドフォンを受け取ります。スタッフのホイッスルが開演の合図。ヘッドフォンを装着して、そこから聴こえてくる質問や指示に従って動きます。質問、指示は合計250。この質問と言うのがひとくせある。

最初ささんと行こうと言ってたところ日程が合わなくてひとりで行ったんだけど、いやこれはひとりで参加してよかったわ…非常にパーソナルな質問が続くのです。居住エリア、年収、家族について、宗教観、セクシャリティ。他者を意識せざるを得ない質問もあり、嘘をつく局面もあります(つかないひともいるだろうが)。これ知り合いと一緒に参加したら結構気まずくなりそうだでー。実際複数人で参加して、動きに迷っているひとがちらほら。反面、タブー気味な質問に堂々と応えて行動するひとが妙にドヤ顔になっていたり(笑)。それを見ているひとたちの視線も興味深いものでした。

そうこうするうち、外国で生まれたひとには蛍光色の黄色で背中に赤十字が描かれているベスト、東京出身者にはオレンジ色のジャケット、地方出身者には紺色のジャケットが配布され、それを着ることを指示されます。それ迄クラシック曲が流れていたヘッドフォンから『宇宙戦争』のサントラが流れ始め、次第に不穏な雰囲気が漂い始めます。そこで出演者は、着ている服が何を意味するのか、自分が何者を演じる役割なのかを知ることになります。

公園の広場はデモやテロが起きた現場になり、紺=警官とオレンジ=囚人が対峙し、警官によって撃たれた囚人には黄=看護師が介抱に向かう。オレンジ色のジャケットと黄色のベストを両方着ているひと(外国生まれ東京育ちってことでしょうか)などは、迫害を受けつつ介抱すると言う複雑な役回りに(役の割り振りは細分化され、同時に行動を起こす場面はありませんでしたが)。名指しで個人を動かす場面もあって、これにはビックリしたわー。名前呼ばれたひと「ええっ!!!」と悲鳴あげてた。あれはビビるわね…いきなりヘッドフォンから自分の名前が聴こえてくるんだもの。しかもそのひと、死ぬ役だった(苦笑)。和やかに、時には笑いも交えて行動していた出演者の間に困惑と緊張が走ります。怪我人を助けたい心境でいても、囚人をレイプしたり処刑する立場だったりするのです。

この心境と役割の乖離は、他者の介入を許さない自分の中で、自身と対峙することを促します。それとともに、自分と他者の共通点にも気付かされる。自己が希薄になり、パブリックドメインそのものになっていく。

音楽にもヒントがありました。ポイント毎にヘッドフォンから流れてくるモーツァルトの『魔笛』には、ひとつずつ解説が付加されていきます。『魔笛』は収入を得るため=金のために作られた、フリーメイソンを暗示している、芸術に対価はあるのか……それをあなたは了解していますか?作曲の過程を知った上で、この曲に高揚感や好意を持ちますか?もしそうなら、広場の中央に進み出てダンスを踊ってください。解説を聴く毎に、曲に対する印象も揺らぎます。


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11月28日(日)
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