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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『AT HOME AT THE ZOO』初日
『AT HOME AT THE ZOO』@シアタートラム
初演された1959年(1958年発表、1960年NY初演)から約半世紀。エドワード・オールビーが『動物園物語』に新たな一幕を書き加えました。その『ホームライフ』と『動物園物語』を一挙上演する『アット・ホーム・アット・ザ・ズー』の日本初演です。キャストはピーター:堤真一、ピーターの妻アン:小泉今日子、ピーターが公園で出会う青年ジェリー:大森南朋。演出は千葉哲也、翻訳は徐賀世子。休憩なしの二幕通しで約1時間50分。
『動物園物語』は翻案含めいちばん回数観ている舞台で思い入れも強く、この中で描かれている問題を一生考え続けていくだろうなと思っているくらい個人的に重要な作品。しかも鳴海四郎訳が頭に染み付いている(笑)。新訳で、所謂エピソード1が付け加えられ、キャストも豪華。期待しない訳がない。同時に不安もいっぱい。しかもジェリー役に大森さん。願ったり叶ったりで嬉しい反面、“あの”長台詞がどうなるか心配でもあった訳です、失礼乍ら。
結果は、すごく面白かった。しかもラストの解釈が今迄観たものと違ったふうに感じられたのは初めてでした。『ホームライフ』が付け加えられたことによってピーターの言動に根拠が生まれ、不条理劇の代表的作品と言われる『動物園物語』の謎が少し明かされたように思われました。実際『動物園物語』は不条理劇ではないと言う意見も多く、さまざまな解釈が提示されてきましたが、今回オールビーからヒント(答えではない)を与えられたことによって、いつ迄も古びないこの作品への想像力が更に拡がった。そして謎が明かされることでまた新たな謎が生まれた。人生を通して向き合っていくことが出来る、深く強い作品だと思います。
そしてその新しい解釈を感じ取れたのは、演じたひとたちの力に因るところも非常に大きいと思います。アンの苛立ちと覚悟、ジェリーの焦燥と偶発的な衝動に向き合ったピーター。彼らは、決して植物ではなく動物であり、血の通った人間として舞台に立っていました。八割は性的なことに関する台詞かな。夫婦だからこそ気さくに?話せる身体の悩み、初対面だからこそ話してしまえる性的嗜好。言葉で発するには及び腰になりそうな事柄を、ごくごく自然に口にする登場人物たち。一幕も二幕も密室的な色合いが濃く、ふたりの会話は他者が決して聴くことがない筈のもの。観客は舞台で起こることを覗き見している感覚です。だから演者は客席を全く意識しない、視野に入れない。これが徹底されていた。これあたりまえのようだけどなかなかないもんですよ…。生々しいのにエロくない。しかし不安定な空気が常に漂っている。性的な会話をしているのに、そこに確固としてあるのは人間同士のコミュニケーションとは何か?と言うもので、相手を尊重する努力と寛容さと諦めが色濃く反映されていました。絶対理解し合えない、でも触れ合えるところは少なからずある。そこに自分を落ち着かせる。小泉さんがすごくよかった。気付けば小泉さんの出演舞台11本中8本観ているが、今回の役には共感するところが多々あったし、いちばん好きな役だな。妻、母、女と言う役割を演じる=生きるアン。
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06月17日(木)
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