ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[649435hit]
■『ザ・ダイバー』
『ザ・ダイバー』@東京芸術劇場 小ホール1
意外と早く日本語ヴァージョンが上演されました。英語版が上演された時、これを日本語でやるには少し間を置いてからの方がいいのではと思ったんでした。作品の内容についての感想は、英語版と変わりません。
・現代能楽集IV『THE DIVER』@シアタートラム
もうこれ、感想をまた書くのすんごいしんどいわ…しかも今回日本語上演だもんで、受け取れる情報量が半端なく増えている。その濃密さと言ったら、上演時間が80分とはとても思えず、終わった時にはもうぐったりする程。
しかし正直、こういうものに出会えるからこそ、劇場に足を運ぶことがやめられないのです。東京芸術劇場の芸術監督に就任した野田さんが、最初のラインナップにこの作品を入れてきたことは、宣言ともとれる。このところの演劇に対する違和感を持つ者としては、この宣言は頼もしくもあり、だからこそタフであろう今後を見届けたいとも思う。以下ネタバレあります。
基本の演出は英語版と同じですが、変わっているところもかなりありました。美術も変わっています。能の型を所作に取り入れている部分は、日本人が演じているからこそ観る側の目も厳しくなり、正直ひっかかるところもありました。
あと、これを入れてきよったか!と言うところがあり…えーと登場人物がシャブをやってると推測出来る動作が加わっています。全然笑えないの、これが。と言うことは、風刺として入れたのではないんですね。ふたりの選択が、道を踏み外したと言う意味にとりました。笑いを狙ったと思われる要素も増えていましたが、英語版を先に観ていて、経過と結末を知っているともう全然笑えない。唯一笑えたのは、本筋とは関係ない野田さんのアドリブ(的な台詞。多分毎回言っているとは思う)の「(いっけいさんが)暑苦しいなあもう…」と言うところだけでした。
そして時間が経つにつれ、「これは笑っている場合ではない」と判断していく観客が徐々に増えて行くのが感じられた。その落差がすごい。終盤には、劇場空間が息が詰まりそうな程の緊張感に支配されていました。英語版では、正妻が最後に電話で言い放つ言葉に笑うひとがいたことが物議を醸していましたが、流石に今回笑うひとは皆無だった。
しかしやはり…英語版とは違う感情が残る。今回初見の姉と一緒に観たのだが、終演後「これ、日野の…だよね?」と言われた。日本の観客にはある程度の共通認識がある。そこがロンドンで上演された時との違いだろう。翻訳物を観る際、その舞台の背景を知っているのと知らないのでは、物語への共感度や理解度に違いが出る。それをまざまざと見せつけられた気もしたのだが、『THE DIVER』はロンドンでかなり評判がよかったように聞いている。作品自体の質が高く、出演者も素晴らしい仕事をしたからだとは思うが、ロンドンと日本ではやはり解釈に微妙な違いがあるように思う。それは面白く興味深いことでもある。
大竹さんはもう、演劇マシーンの本領発揮と言ったところ。狂気のパートはもう期待通りのものが観られます。カメラのシャッターを切るが如く、人格が次々と入れ替わる。あれだ…変な例えをすると、手旗で赤上げて白上げて白上げないで、てのを完璧に正確に出来るひとみたい。かなり振り切った演技もするので、序盤は笑いが起こることも。しかしこのひとがすごいのは、その狂気の裏側にある途方もない悲しみも表現出来るところ。今回、ほんの少しの表情や動作の変化で感情の流れを表現する部分があった。映像的な演技プランでもあるのだが、今回のキャパの劇場だったらそれが感じ取れる。本人それも判ってやっているのだろう。ラストシーンの、こどもを送り出し海の底へ沈んで行く海人の表情にはやられた。
[5]続きを読む
08月29日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る