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by kai
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■K-BOOKフェスティバル 2025 in Japan『空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜』
この日は主に映画の話でしたが、フェス初日に公開された映像インタヴューでは、映画のこと、出版業と俳優業の両立について、読書が演技をする上でどのように役立つかなどなど、じっくりお話しています。アーカイヴうれしい。

・事前収録Interview|初めまして、出版社MUZEの代表パク・ジョンミンです 무제 출판사 박정민대표 특별 인터뷰

うーむ、やはりクレバー。心身ともにおだいじに(再)。

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さて『空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜』本編。原題『동주(ドンジュ)』、英題『DONGJU;The Portrait of A Poet』、2016年、イ・ジュニク監督作品。『金子文子と朴烈』の監督でもあります。

日帝の蛮行が描かれている作品のせいか、日本での公開は映画祭や小規模上映会のみだったようです。日本語の資料には、尹東柱と宋夢奎は「獄死した」と書かれている。金子文子もそうだったけれど、「何故、どうして」獄死したのかの詳述がない。それが何を意味するか……少ない証言からわかったことは、ふたりとも拷問、人体実験により衰弱死したということ。いくら隠そうとしても、なかったことには出来ないことだ。

作中で宋夢奎は明確な革命と独立の意志を持っていた。尹東柱は彼に憧れていたが、工作活動は行なっていない。創氏改名を強いられ、母語を話すことも書くことも禁じられた。それでも彼は母語で詩を残したかった、詩への情熱は消えなかった──。純粋な言葉を紡いだというだけで、宋夢奎と関わりがあったというだけで、彼は逮捕され投獄された。

全編モノクロームの映像。そのことが、作中の出来事を二度とあってはならない過去のことにしたい、その上で忘れてはならない、と示しているようにも感じる。加害者側の国に生まれた者として、後ろめたい、申し訳ない気持ちになる。少しの救いは、こんな時代にも、彼らに寄り添うひとが日本にいたということ。その詩に感銘を受け、出版に尽力したひとがいたこと。

恐ろしいのは、この映画で描かれていることが過去のことだといいきれなくなってきていることだ。今、日本はあの時代に逆行してはいないか。宋夢奎の「悔しさ」は、また繰り返されるのだろうか。そんなことはあってはならない。尹東柱を支援した大学教授とその教え子の側にいたい。

ジョンミンさんの演技は素晴らしかった。トークが上映前でよかったとも思った。K-BOOKフェスティバル 2025のテーマは「まじわる」。極端な話、この役を演じてなお、ジョンミンさんが日本と交流を持つ意志を示してくれたことに感謝する思いだった。

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・『空と風と星の詩人〜尹東柱の生涯〜』┃
日本のサイト残ってた

・輝国山人の韓国映画 空と風と星の詩人〜尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯〜
いつもお世話になっております。エンドロールで流れる尹東柱と宋夢奎の年表の訳が全部載っている! 有難い! 情報量が多いのでほんのちょっとしか字幕つかなかったんだよー!
キム・イヌが今作でも日本人役(尹東柱を尋問する刑事)。『暗殺』、『お嬢さん』、『金子文子と朴烈』、『工作』……観たものだけでもこれだけ日本人役で出てる。日本語を綺麗に話す方だからでしょう。『輝国山人の韓国映画』は役者のプロフィールも紹介されているのですが(韓国のタレント名鑑といっていい充実ぶり。いつもお世話になっております(再))、それによると在日3世(国籍は韓国)なのだそうです。『金子文子と朴烈』の文子役が素晴らしかったチェ・ヒソも、尹東柱の詩集を出版しようと奔走する日本人女性を演じていました。
観た限りだけど、韓国映画っていわゆる抗日作品でも「寄り添う日本人がいた」ということを零さず描いているものが多い。救われる思いでもある

(20251201追記)
・パク・ジョンミン来日、ユーモア全開で俳優人生の転機語る 来年公開作の邦題も提案┃映画ナタリー
詳細レポ出た。『新感染 顔』、本気にされたら困る。ツインさん絶対つけないでよ!

11月23日(日)
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