ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『消防士 2001年、闘いの真実』『小林建樹ワンマンライブ BLOSSOM 夜空に咲いた打ち上げ花火』
白眉は「ハート♡Radio」。架空のラジオ放送局のジングル、各局をチェックしていく様子が次々と展開されていく。まさに「音で絵を描く」。先日も書いたけど、ちいさい頃AMラジオを巡回していて朝鮮語の番組を受信し、「わあ、海を超えて外国の番組が届くんだ!」とワクワクしたことを思い出す。今はradiko等のアプリを介して聴くことが殆どなので、偶然電波をキャッチするなんてことは皆無に近い。ラジオってダイヤルをちょっとずつ廻して電波をピッタリ受信する過程も楽しかったんだよなあ。そんなワクワクした気分を思い出させてくれる、ラジオの魅力が詰め込まれている素敵な曲。

といえば「キナコ'87」のインパクトは何度聴いても薄れないな。こちらも夏の部活の情景が瑞々しく描写される楽曲なのですが、そんな、運動して汗かいて水飲んでそれで食べたいのがわらび餅!? と聴いててこちらの理解力がバグる(笑)。いや、疲れたから甘いものが食べたいのはわかる。わらび餅も本体はゼリーみたいでするりと食べられるのもわかる。でもキナコは……喉に詰まるじゃないか。あまりにも個性的なチョイスで、こういう曲って小林さんにしか書けないよなあともはや感動すらしている。

夏といえば、のアルバムは『Rare』。小林さんのリスナーであれば周知のところだが、同時に「苦しみ抜いて作ったアルバム」だということも知っている。その話はライヴのMCで何度も聞いていることだが、今回そこに「多くのひとに助けてもらって作り上げることが出来た」という話が加わった。この日は私に小林さんを教えてくれたにゃむさんとライヴを観ていて、開演前や幕間に「2枚目(『Rare』)って大概のひとが産みの苦しみを味わうっていうものね」「2ndから知ったので私は大好きだし思い入れがあるんだけど本人には辛い思い出が強いみたいだね」なんて話していたのだった。今回初めて関わったひとたちへの感謝の言葉のようなものが聞けて、少しだけホッとしたのだった。窪田さん聞いてる!? なんて胸が熱くなったりして。窪田晴男が関わっていたのはデビュー前から2nd迄。そうそう、この日は『Rare』期の「花」もやってくれてうれしかったな。

といえば、私が初めて行った小林さんのライヴは大学(どこだったっけ…中央大だったかなー)の学祭で、窪田晴男とのデュオだったのだ。そのときの演奏に一聴惚れして今に至るのだが、ふたりともギターでの演奏だった。学祭だったため運搬しやすいギターしか持ち込まなかったのかも知れない。直後に観たリリースしたての「SPooN」MVでもギターを弾いていたので、しばらくは小林さんのことをギタリストだと認識していた。今ではやはりピアノマンだと思っているが、ギターの演奏も本当に個性的だし魅力的。今回「祈り」を演奏する前に、「この曲はもうどのくらい唄ったかわからないくらい唄っていて、試行錯誤もしてきた。ギターでやったこともあって」という話に「それ聴きたい!」と思ったけれど、それは近年定期的に演奏を聴ける環境になったからこその贅沢な望みかな。次のライヴ日程については告知されなかった。

定期的にライヴ活動を再開したのは2022年、ウクライナとロシアの戦争が始まったあとのこと。そのときからもう何回この曲は演奏されただろう。「全く同じことを続けて、全く同じクオリティの演奏をいつでも出来るのが理想」といった山下達郎の言葉を紹介し、「自分にそれが出来るとは限らないけど、いつでも丁寧に演奏することを心掛けている」と話したあとに演奏されたこの日の「祈り」は絶品だった。光を放つようなピアノ、抜け良く響く高音の歌声。この曲には、やはりピアノがよく似合う。また聴ける機会に居合わせることが出来ますようにと願う。

音楽は世に放たれた瞬間から聴き手の解釈に委ねられる。だからいろんなことに利用される。戦争にも、平和にも。聴き手は平和な世界に鳴り響く音楽を聴きたいと願っている。小林さんの「祈り」が、争いの続く世界へと届いてくれることを願っている。

(セットリストはツアー終了後転載予定)

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Setlist(オフィシャルサイトより)

01. カゲロウ(嵐への提供曲)
02. カナリヤ(『流れ星Tracks』)
03. 満月(『曖昧な引力』)
04. 進化(『Rare』)

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07月05日(土)
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