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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■東京バレエ団『ベジャールの「くるみ割り人形」』
あまりにも感情を揺さぶられてしまい、その後はもう憑き物が落ちたように笑顔で観た。特に二幕はビムが世界のあちこちでクラシック・バレエの真髄を目撃する場面が続くので、優れたダンサーたちの高難度な技に感心しうっとり見入る。金子仁美と安村圭太のグラン・パ・ド・ドゥ、手を繋ぎ輪になって踊る母たちの幸福に満ちた光景に胸が躍る。母子の別れにはその切なさにやはり涙してしまうが、同時にビムの輝く未来を思い清々しくもあった。

作品を彩る名曲の数々にはアレンジが施されており、特にオーケストラのみのオリジナル曲が広く知られている「雪片のワルツ」や「花のワルツ」にアコーディオンが加わるとこうなるのか、という新鮮な驚きがあった。衣裳の数々も素敵なものばかり。個人的には合唱隊のケープとショートパンツ、ビムの妹クロードの緑の衣装がお気に入り。かわいい!

舞台はこのときこの場所だけのもの。ひとの命もそのひとだけのもの。替えは利かない。ベジャールは自分の人生を重層的に世界へと映し、観客に差し出してくれた。スケジューリングが難しいと思うが、なるべく早くシムキンを迎え再演してほしい。そのときにはきっと今日と違う光景が見られ、今日とは違う感情が生まれるだろう。待っています。

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・しかしプティ・ペール、今後の上演ではどうするのだろう。もうあの役、ジル以外には考えられないじゃん……再演する毎にジルが来てくれたらうれしいですね

・小林十市が語る、ベジャールの魅力と『くるみ割り人形』」イベントレポート&小林十市さんインタビュー┃バレエチャンネル
「ダンサーが自由に、自分なりに解釈して表現できるのがベジャール作品の良さだと思う。ただ、それはベジャールさんがそこにいるからできること。(中略)ベジャールさん以外の人が振り写しするとなると、そこまで自由度は広がらない。難しいところです」。

・ジル・ロマン&柄本弾が語る、“ベジャール作品を踊り継ぐ”ということ 東京バレエ団「ベジャールの『くるみ割り人形』」┃ステージナタリー
柄本 舞台は踊るたびに新しい発見があって「今回の舞台は完璧だったな」ということはまずない。多分ほかのダンサーも同じだと思いますよ。
ロマン “完璧”は存在しないですよね。ダンサーは踊りながらいつも頭のどこかで自分を批判しているものです。絶えず研究というか、より良いものを探し求める。私は今まで数え切れないくらい「アダージェット」を踊ってきましたが、まだ踊りたいですよ(笑)。
乗越 舞台芸術の場合、作品そのものに時代を超えるだけの力があったとしても、それを踊り継いでいくダンサーたち、あるいは上演するバレエ団がなければ、やはり残っていくのは難しいことだと思います。その最も重要な過渡期を、ジルさんと柄本さんはまさに今、ベジャール作品を未来に手渡していくためにご尽力されていると思います。

今回観られなかったけど、柄本さんはM...初役。ベジャールから直接指導を受けていない世代です。ベジャールが亡くなって今年でもう18年ですから、今となっては現役ダンサーの殆どがそうかもなあ。“ベジャールの時代”を知るダンサーは、数十年後には誰もいなくなる。それを目撃してきた観客もだ。乗越さんが指摘している「作品を未来に手渡していくため」の試行錯誤は、世界のあちこちで続けられている

・これを知ればもっと舞台を楽しめる! ベジャールの『くるみ割り人形』┃NBS日本舞台芸術振興会
『くるみ〜』自体が初見だったので非常に参考になりました。クリスマスの夜のお話ということで、各バレエ団の年末恒例プログラムにもなっている本作品。秋にバレエの公演に行くと、そりゃもう大量の『くるみ〜』公演案内チラシを受け取りますよね。クラシック界の『第九』みたいなものでしょうか。古典上演もいずれ観に行きたいな

02月08日(土)
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