ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『高橋徹也 × 小林建樹』1
高橋さんと小林さんが共演した[monologue]での一曲目が「ブラックバード」だったと記憶している。丁度10年前のことだ。それ迄テキストと写真でしか認識していなかった“高橋徹也”の、初めて聴いた曲がこれだった。あっという間に虜になった。それを思い出した。続いて「八月の流線形」、夏が来た。2曲を終えて「絶対寒いとか、そういうこといいませんよ(笑)」。すっかり高橋さんのペースだ。
ここからのMCがなかなか興味を惹かれるもので、「同級生の、よくわかんないかっこいいひとがいたなーと久々に(小林さんに)連絡してみました」といった話から、自分のデビュー時代の話題へ。「鳴り物入りですごい予算をかけて」「空前絶後の」「後で聞いた話なんですけど。すごい期待されてデビューした(んだなあと)」。何をいい出す……と思ったのだが、ライヴが進むにつれなんとなくイメージが見えてきた。憶測だが、時間についてがテーマにあったのではないか。
リスナーとして惹かれたのはドーナツ盤のB面曲。自分がデビューした時代のシングルは8cmCD。と、デビューシングル「My Favourite Girl」のカップリング曲「サマーパレードの思い出」を。こちらも夏を振り返る曲。「今日は無礼講なんで」と、小林さんともデビュー時のことを話す。多くの作品を出した40代を「充実した10年だった」と振り返る。そして「本を読むこと」と同じような「日常生活と多層的に並走するもうひとつの時間軸」を、音楽で奏でる。高橋さんの歌詞の世界には物語がある。
こうやって聴き比べると小林さんの歌詞は直截的な言葉が多い。「言葉より先に行きたい」思いがあるためか、ときどきギョッとするような単語も出てくる。一方高橋さんの書く歌詞はシュールな情景描写含め文学的で、アルバムやライヴがそれこそ一冊の本のように感じられることがある。そう思っていると、犬と猫の話が始まった。またもや何をいい出す……と思っていると、「無口なピアノ」が始まった。犬猫の話が導入だったが、主眼はピアノとギターというワードにあったのではと思う。ギターも弾くがやはりピアノマンの印象が強い小林さんと、ギター一本サラシに巻いて(巻かない)の高橋さん。おお、これは……まるで愛の告白のようではないか。いつもとは違う方向から光をあてたプリズムのように、歌詞の違う一面が見える。
「La Fiesta」を終え、「いやあ、スターパインズって気持ちいいですね」。恒例の大晦日イヴェントに出られなかったので、新年一発目のライヴがここで出来てうれしいとのこと。「では、ヤツを呼んでみましょうかね……愛すべき、一月生まれの同い歳、小林建樹!」。
顔をあわせるなり「すみませんなんか、小林さんについて勝手なイメージで話しちゃって」と高橋さん。「今回はリハにも付き合ってもらってすごく楽しかった」「電話したりごはん食べに行ったりするような仲ではないんですけど、ふとしたときに、ああ小林さん元気かなあって」「勝手にいつも共感してるひとりです」といったあと口にしたのは「どうですかこの、僕のラブレター」。おお、照れつつもハッキリいった。対して小林さんは「ああ、和音っていうかコードとかにシンパシーを感じますねえ」と予想に反して(?)楽曲についての話を始め、ピアノをパラパラと弾き始める。ほら、ほら、こういうの、とコードを弾きつつニコニコと高橋さんを見上げる小林さん。「それはちょっとあなたにいわれたくない」と高橋さん。お互いすごく気を遣っているようなのに、聴いてるこっちがヒヤヒヤする(笑)堅い会話が続く。どちらもずっと敬語。小林さんは何度も鍵盤の上に手を置きなおし、いつ始めるの? とでもいうように高橋さんのことを見ていた。
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01月27日(金)
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