ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ワン・バトル・アフター・アナザー』
背筋も凍るキモさといえば“クラブ”のメンバー。皆さんクリーンな血筋でですか、ああそうですか。見た目で選んだ(というか、そう選ぶしかない)悪意を強く感じるのだが、引き受ける側も偉い。これもアメリカの理想と現実、美徳と悪徳。演じる側にメンタルのケアが必要なのではとも思う。必要なかったらそれはそれで怖いが。そう思わせてしまう、死人のようなツラ構えのひとばかりだった。対して女優陣は生命力溢れるツラ構えのひとばかり。レジーナ・ホールテヤナ・テイラー、そしてチェイス・インフィニティ! チェイスはもう名前が格好よすぎるよな。走る姿も美しい。

で、ベニーですよ。センセイ…センセイが……何あれホワイトナイト? 王子様? 天使? ベニー、綺麗よ〜! ひととしてこうありたい〜! こういう役をベニーがやるとすごい説得力だわ……一週間で全く違うタイプの役柄を演じるベニーを2本も……! ありがてえありがてえ。

それにしても『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』ばりに音(楽)がデカかった。このひとの映画って総じて音がデカいけどね。最高! 音楽は毎度のジョニー・グリーンウッド。音楽そのものも毎度の凄まじさだったけど、今回はあのガジェット(“デバイス”な!)──仲間を知らせるあの音──もつくったのだろうか。あの音最高だったよね……。使用曲も含みがあり過ぎた。古き良きアメリカですか。ヴァン・ヘイレン作戦て。

先週観た『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』の共通点といえば、まずベニーが出ているということ(にっこり)、父と娘の話だということ、監督がアメリカ人であること、その監督はどちらもアンダーソン姓であること。ふたりのアンダーソンは、ひとりは相対的に、ひとりは真っ向からアメリカを描いたということ。絶好(最悪?)のタイミングで観てしまった気すらする。“憎むべきアメリカと愛すべきアメリカ”(後述リンク参照)はこれからどこへ向かうのだろう。

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・パンフレットのPTAのインタビューによると、センセイの“You Know What Freedom Is? No Fear. Just Like Tom Cruise.”という台詞はニーナ・シモン(!)の言葉がベースになっているとのこと。台本にはなかったけれど、現場でこの言葉をベニーの口から語らせるべきだと思ったのだそう。有難う有難う

・あ、“Just Like Tom Cruise.”の部分はニーナ関係ないです(笑)

・池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第2集┃河出書房新社
このシリーズの装丁が好きで好きで。『ヴァインランド』はこれの3冊目

・波 2011年11月号より ピンチョンと真剣勝負 佐藤良明┃新潮社
三度目の刊行の機会を得た。(中略)今まで気づかなかった原文の意味や仕掛けが見えて、背筋が寒くなり通しだった。
訳文はすっきりしたと思います。地図や年表の他、“時の森”を這う蔓(ヴァイン)のような語りの運動を図解したページも用意しました。憎むべきアメリカと愛すべきアメリカが、よりよく見える本になったと思います。
2011年版刊行時、訳者である佐藤さんによるレヴュー。こういわれたら2011年版も読みたくなるやん…年末年始にでも読むか……(すぐに手をつけ(られ)ないところがピンチョンズクオリティ)

10月08日(水)
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