ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『脱走』
亡命した国が果たして理想郷かは判らない、幸せに暮らせるかなんて判らない。ギュナムの目的はそこではない。彼はあくまで「失敗出来る」「挑戦して、失敗して、また挑戦出来る」ことを目指しているのだ。『不思議の国の数学者』でもそうだったが、南に亡命した数学者は最終的にドイツに渡る。南で全てが叶えられる訳ではない。自国の問題も反映しつつ、しかし「ここから挑戦出来る可能性はある」と伝える。「失敗してこい」は、ギュナムにとっては希望、ヒョンサンにとっては絶望の言葉だ。

夢を叶えようともがくギュナムと、夢を諦めたヒョンサン。家族が皆亡くなっているギュナムと、(おそらく)ゲイであることを隠して(おそらく)政略結婚し、もうすぐ子どもも生まれるヒョンサン。人生で幾度かある選択の末、家族と体制に縛られてしまったヒョンサンは“脱走”の道を失っている。こういうところも周到なホンだった。運命の分かれ道はどこだったのだろう。南北分断という問題から、夢を叶える若者の物語を生み出した1980年生まれの監督に瞠目し、同時にジェネレーションギャップも感じたのでした。

走る姿の美しいギュナムにイ・ジェフン。表情と仕草で語るヒョンサンにク・ギョファン。演技合戦も見応えありました。あのあとヒョンサンどうなったのかなあ……。

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マックィーンの『大脱走』とかは戦争終わってるからああいう終わり方でもはーてなるけどこっちはまだ終わってないからなあ。やるせないものがある。それにしてもクギョファンのツラ構えよ(サインかわいい) ああクギョファンよクギョファンよ

[image or embed]— kai (@flower-lens.bsky.social) Jun 21, 2025 at 19:45
ク・ギョファンいいよね〜、舞台挨拶行きたかったよ〜(残業確定曜日だったため断念)

・脱走┃輝国山人の韓国映画
いつもお世話になっております。ソン・ウミンのこと「リ・ヒョンサンの元恋人」と明記されている。まあどう見てもそうだわな。しかしおまえそんなにじっとりした目で見つめるなよ! 誰かが携帯見たらどうすんだよ、「かつて愛した犬野郎」てあからさますぎるだろう! と、ふたりともこっちが心配になる程脇が甘い。せつない

・[コラム] 朝鮮戦争停戦から71年…映画『脱走』があぶり出す南北の若者の‘今’(徐台教)┃Yahoo!ニュース
徐台教さんによるコラム。本国での宣伝バナー画像には少なからず驚いた。日本での宣伝が「止まったら、即死亡──」とかいうコピーで「ゲーム感覚なのか……?」と引っかかったんだけど、本国でもそういう感じだったんだなあ。
この映画を観た翌日、『情熱大陸』で金原ひとみが朝吹真理子と韓国に取材旅行へ行き、南北境界線付近で有刺鉄線がグッズとして売られていることに驚く様子が流れていた。歴史をエンタメとして消費する強かさと後ろめたさ。一筋縄ではいかない歴史

・以前チョコレートケーキが上演した『ライン(国境)の向こう』を思い出したりもしました。戦後日本が北と南に分断されていたらという話。地続きの国境がない島国でも、こうなる可能性があった

・余談、ギュナムがラジオで南の放送を受信して方角を探るシーンを観て思い出したこと。ウチの田舎では、ラジオで半島(南か北かはわからんが、まあ位置からして南かな)の放送が聴けた。間に熊本がある宮崎でそうなのだから、対馬海峡に面している長崎ではもっと、かなり鮮明に聴こえるんだろうな。てか長崎は半島が見える距離だもんね、天気いいと(修学旅行のとき見た憶え)。南北分断はそれくらい近いところで起こっていることなのだ

06月21日(土)
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