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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■エディ・ヴェダーの休日+小林建樹ワンマンライブ『BLOSSOM』
小林建樹ワンマンライブ『BLOSSOM』@Com.Cafe 音倉

という訳で心は千々に乱れたまま(エディ心労)小林さんのライヴです。雨の下北もよいものです。いやー本当に同じ演奏というものがない、今回ピアノもギターもかなり変わっていた。勿論楽曲のコード進行は同じなのだが、曲間のブリッジ、イントロやアウトロに新しいコード展開が加わっている。それがかなりジャズ寄り。耳馴染みのある曲も多かったのにも関わらず、演奏の様相は随分変わった印象。

目に見えて新しいことしてるな、と感じたのはギターで、一曲のなかでフィンガーとピックを使い分けていた。指で弾いたあとすぐにピックでコード弾きをするため、ピックを口に咥えて演奏したりもしていた。そのギターで「満月」を聴けたのはよかったなあ。

最新作、まさに出来たてほやほやの『BLOSSOM』リリパでもあり、ご本人も「『BLOSSOM』からいっぱいやります」といっていたけれど、蓋を開けてみればバラエティに富んだセットリスト。『BLOSSOM』には近年のライヴ(こう書ける日が来るとは!)のレパートリーからの楽曲も多く収録されており、ようやく音源化されたといううれしさもあった。アルバムタイトル、花が描かれたアートワーク、リリースされた季節と、「春」という隠れ(?)キーワードがあり、歌詞に「春」が出てくる曲が意識的にチョイスされていたような印象。「歳ヲとること」とかね。

以前の比率としては、既に音源になっているものをライヴでやることの方が多かった。そして復帰(といっていいのか)してからの小林さんのライヴは独演で、ギターかピアノの弾き語り。バンドサウンドアレンジの楽曲が独演だとこうなるのか、と興味深く聴いていた。一方、ここ数年でリリースされた音源は宅録色が強い。いわゆる“生演奏”は鍵盤とギターだけ。それにPC上で様々な音を加えている。

『BLOSSOM』はライヴ会場で販売されるとことが判っていたけれど、早く聴きたくて(あと物販の際話したりサインもらったりというのがどうも苦手なので)通販で購入していた。音源で初披露されたものとライヴから発表されたもの、そのどちらにも属する楽曲が収録されていた。「Air」や「Scream」は、えっ、これ音源化されてなかったっけ? と思ってしまうくらい馴染み深い曲。ライヴで親しんでいた楽曲がこういうアレンジでレコーディングされたのかと驚き、そしてこの日、再び“生演奏”で独演されたものを聴く。楽曲の骨肉が剥き身で差し出される。なんて贅沢。

そしてジャズ。もっと細かくいえばサンバジャズ、ボサノヴァ。窪田晴男曰く「随分南米行ってる」リズムとコード展開による長年の曲作りが、演奏にも色濃く現れていた。そしてこの集中度の高さ。これも窪田晴男の弁だが、「毎回点で物事と付き合う、演奏をしてても前の演奏の事を持ち出す事が少ない、3分半くらいの間に自分を全部投げ出せる集中力があると言う事で、ポップスをやるには向いている」という評をまざまざと思い出した。「3分半くらいの間に自分を全部投げ出せる」。

勿論ライヴ1本をやりきるコンディショニングは考えているだろうし、MCの内容もしゃべり方も練習しているそうなので構成はかなり練っているだろう。それでも“自分を使い切る”かのように唄うその姿には圧倒されてしまう。そうそう、今回声がすごかったのだ(いつもすごいが)。芯がより太く、より鋭くなったかのような声。通常では裏声に切り替えていた箇所を地声で唄いきる場面が増えていた。“刺さる”声だった。


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03月15日(土)
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