ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[647677hit]
■Q / 市原佐都子『キティ』
そんなオエーとなるあれこれを、カワイくポップに見せるプロダクションに震え上がる。フォントづかいのセンスには『バッコスの信女』でも唸らされたものだが、今回も同じくフォント選択、YouTubeを模した配信動画、AI生成だと思われるパペットアニメーションの凄まじいこと。アニメパートはちょっと長いんじゃないかと思いつつ、あまりのカワイさとグロテスクさにうっとりしてしまうくらいだったので短くすればよかったのになんていえない。すげーカワイイキャラクターたちがカワイく乱交しカワイく子育てしカワイく共喰いするのよ。それも凄まじい物量とスピードで。この映像センスよ……つくったの誰だよ! と笑いながら怒るひとみたいになって終演後即スタッフクレジットをチェックしてしまった。小西小多郎、覚えた!
永山由里恵(日本)、ソン・スヨン(韓国)、バーディ・ウォン・チンヤン(香港)の身体的負担は大きい。巨大なねこ頭を被ったままのダンス、交尾、格闘と、その負荷は現代社会に生きる女性たちのそれと重なる。これが「AVに参加させられる」社会そのものなのだと納得もしてしまうのがまたつらい。しかし(だから?)終盤ようやく彼女たちの身体から発せられた生の声には心を揺さぶられるものがあった。ちなみにキャストは3人だけだと思い込んでいたので、花本ゆか扮する肉ニンゲンが登場した時は心底驚いた……「ひっ」くらいは声に出てたかも知れない。着ぐるみ(つうか文字通り肉襦袢よな)装着で踊りまくるそのキレのよさ、ブレのなさに感嘆。
『バッコスの信女』の再演もそろそろ、今こそ観たい。
-----
・Q / 市原佐都子「キティ」┃シアターコモンズ'25
・「キティ」市原佐都子と韓国・日本・香港のアーティストが作る“かわいい”から始まり、宇宙へ到達する物語┃ステージナタリー
市原 キャラクターの中には、偽物がたくさん出回っていたり、オリジナル以上に面白かったり愛おしく感じるものもあって、そういう“偽物のキャラクター”のような演技ができないかと考えました。つまりオリジナルからアイデアだけが抜き取られて、別の存在として蔓延していく感覚……
・開演前のロビーでコモンズツアーの感想シェア会が行われており、ちょっとやり取りが聴けた。「市原さんの作品はどこにトリガー・ウォーニングを入れればいいかわからない。全編そうともいえる」(大意)といっている方がいて頷いてしまう。傷ついているひとにこそ観てほしいと思うが、安易に勧められないのが難しいところ
・それにしても昨日の東京サンシャインボーイズにしても今日のQにしても、扇田昭彦さんだったらどんな劇評を書いたかなあと思うのだった。圧倒される舞台を観るといつもそう思う。今でも劇場ロビーで姿を探す。今年で没後10年
03月02日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る