ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ソウルの春』
韓国を代表する役者たちが揃っている。相当な覚悟をもって出演したのだろうと想像がつく。クーデターの首謀者はファン・ジョンミン、迫真の演技。全斗煥のイメージを身体に刻みつけたかのよう。特殊メイクの効果だけではない。首を前に出した猫背、両手を腰に当てるポーズ。身長すら縮んで見える。ソウルを守ろうと奮闘する首都警備司令官はチョン・ウソン。高潔で清廉な人物像を濁りなく見せる。だからこそ彼の辿る道を知っている観客は歯ぎしりし、その後の平穏を祈り続けるしかない。
盧泰愚にあたるノ・テゴン役、パク・ヘジュンも小心な人物像をうまく造形していた。ズッ友描写にはついイヤな笑いが出てしまった…盧泰愚と全斗煥、同じ年の1ヶ月違いで死んじゃったんだよね……(事実は小説よりも奇なりではあるが、実際こういうことって結構あるもんですね)。憲兵監役のキム・ソンギュンも誠実な人物像、観る側の心が寄る演技。対処の最適解を知っているのにそれを悉く無能の上司に潰される。その後が気になる人物だった。モデルとなる人物はキム・ジンギ(金晋基)とのこと。彼の名誉もその後回復されたが、生涯クーデターの悪夢に苦しめられたとある。
陸軍参謀総長役のイ・ソンミン(『KCIA 南山の部長たち』では朴正煕役だった)、第10代大統領役のチョン・ドンファン(事後報告だと日付をサインするとこよかったね……)も穏健な人物像で印象的。テシンの部下役のナム・ユノも印象に残るツラ構えと強い声を持っていた。特殊戦司令官役のチョン・マンシクとその部下役チョン・ヘインにもいい見せ場があった。マンシクさん『HUNT』でもエラい目に遭ってたけど、監督の嗜虐性を刺激する何かを持っているのだろうかとちょっと笑ってしまった(ヒドい)。
そう、シーンごとに見せ場がある。ダイナミックな銃撃戦、空撮で見せる戦車の進軍。隊列の前にひとり立ちはだかるテシン、バリケードをひとり超えていくテシンにかなりの時間を割く。格好よく見せたい気持ちはわかる、実際格好いい。画面いっぱいに砲撃のカウントダウンを映し出す演出にはちょっとあざとさを感じたが、こうして自国の負の歴史をエンタメとして見せることの影響力を作り手はきっと自覚している。観客は手ぶらでは帰れない。何故こうなった? と考えることになる。背景を調べる。繰り返されてはいけないと心に刻み、自分には何が出来る? と問う。これがエンタメの力なのだと信じたい。
そして日本の観客は、では、自分たちの国は? と思わずにはいられないのだ。
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・ソウルの春┃輝国山人の韓国映画
いつもお世話になっております。“配役中の【 】は,実際の事件における氏名”、こういうのがホント助かる! 有難うございます!
・ソウルの春(映画)┃ナムウィキ
トリビアいっぱい。鑑賞のお供に
・10.26朴正煕大統領射殺事件
こちらは朴正煕暗殺事件の詳細。個人サイトでこれはすごい……勉強になります
・映画「ソウルの春」(1)KBS「映像実録」1995年10月4日放送
・(2)新聞報道
・(3)背景
・(4)攻防の現場
・こぼれ話(1)
・その後
こちらもいつもお世話になっております。パンフレット(読み応えあり!)に寄稿されている秋月望氏が、自身の『一松書院のブログ』で更に詳しく背景を。“ソウルの春”の名付け親は日本のマスコミだったとのこと。張泰玩とその家族の「その後」は本当につらい。
それにしても民主化宣言を出したのは盧泰愚。どの口がいうか。その後彼が大統領になっている辺り、根が深いというか物事は単純ではないことを思い知らされる
・隠ぺいされた韓国現代史の闇に切り込む『ソウルの春』 監督が語る「夜空に轟く銃声を聞いたあの日」┃Yahoo!ニュース Japan
事件を起こした人たち、関連した方たちは、少し前まで韓国社会にとって非常に重要な位置、権力を行使する位置にいました。そのため、月日は経っていたにもかかわらず、表立って語るのは難しかったのだと思います。
桑畑優香氏による記事。本国では国民の4人に1人が観た計算になる大ヒット。多くの若者が駆けつけ、様々な議論が展開されたそうですが、当時を知る年長者の口は重かったそう。それにはこうした背景もある。
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08月25日(日)
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