ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ソイレント・グリーン デジタル・リマスター版』
「家具」たちのお茶会にはアンニュイな心地よさがあった。彼女たちには外の恐ろしさを知らないまま暮らしていってほしいなんて願ってしまう。「あなたたちは自由を知らない」なんて、誰が彼女たちを責められようか。知らんけど優しいおっさんに賃貸されて何不自由なく暮らすのと、自由に動けるけど衣食住が圧倒的に不足した不衛生な場所で暮らす生活と、どっちがいい? でも、作中描かれてなかったけど、この「家具」たちもやがて歳をとるわけじゃん。そしたらどうなるの……「本」になれるの? その「本」だって「ホーム」へ行きたいとか思うようになるし! そもそも自由って? 裕福って? 豊かさって? 幸せって何ーー!!! 刑事が「家具」に“Just Live.”という場面が沁みました。ただ生きる、この世界でそれがどれだけ困難なことか。

刑事役は往年のスター、チャールトン・ヘストン。モテモテ。女性と老人にやさしく、正義の人。かと思えば捜査に入った豪邸からいろいろとちょろまかして帰っちゃう茶目っ気もあり。それも自分ちにいる「本」へのお土産だもんね。てか父子という訳でもないのに同居しているこの「本」のことを、仕事上の必要もあれど上司から「そろそろ新しい本にしろ」っていわれてんのに拒否する辺りも人情派。こりゃモテる。その「本」を演じたエドワード・G・ロビンソンは今作が遺作。自ら「ホーム」へ向かい、ベートーベンの交響曲第6番『田園』が流れるなか、かつての美しい地球を眺め乍ら眠りにつく。胸を打つ臨終の場面でした。これはスクリーンで観られてよかった。

原作はハリイ・ハリスンの『人間がいっぱい』というSF小説とのこと。ハヤカワ文庫で邦訳が出ていたそうなんだけど絶版。読んでみたいけど結構なプレミアがついています。これを機に復刊しないかなー。ちなみに「皆に伝えよ!ソイレントグリーンは人肉だと」は、刑事の最後の台詞だったのでした。20年近く経ってやっと知る。

50年前にもうダメだー! と思われていた世界は、ヨタヨタしつつも人間が生きていける環境ではある。地球の寿命は宇宙の摂理なれど、それ迄この星の美しさは維持していきたいものですよ……。

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こまごまメモ。

・溢れる人、人、人。人とゴミの山、美しい自然と破壊される自然などのコラージュによるオープニング。これらは実際の映像で、日本の満員電車に押し込まれる乗客の様子もありました。当時から名物(?)だったんですね

・丁度一年前にKAATで上演された、タニノクロウ演出作品『虹む街の果て』に「これ、ソイレント・グリーンがモチーフだよなあ」と思うものが出てきてたんですよね。ずっと気になってた。今回答え合わせが出来た感じ

それにしてもこの映画、宣伝がうまかった。

人口爆発、環境破壊、食糧難、超格差社会… 絶対に〖口にしてはいけない〗 凄惨な結末を見届ける勇気はあるか—。5/17にシネマート新宿にてデジタル・リマスター版公開の『ソイレント・グリーン』の1973年アメリカ初公開時の宣伝用缶詰と広告(のようです)。 pic.twitter.com/0DxL7s1IbI— キングレコード映像制作部 (@KING_VIDEO) March 8, 2024
2022年
人間は同じだ
必要なものを手にするためには
なんでもする
必要なのは
ソイレント・グリーンだ

1973年MGM発行プレスブックより pic.twitter.com/odGKr2SiFx— 映画『ソイレント・グリーン 《デジタル・リマスター版》』 (@SOYLENT_GREEN24) March 28, 2024
#みどりの日 🟩 pic.twitter.com/Gub8GJi5lq— 映画『ソイレント・グリーン 《デジタル・リマスター版》』 (@SOYLENT_GREEN24) May 4, 2024
こんなん気になるやん!

🟩COMMENT

ディストピア作品のなかでも『ソイレント・グリーン』を特に好きな映画としてこれまでも挙げていらっしゃる、やしろあずきさんにイラストをお寄せいただきました🟩🟨🟥

皆大好きディストピア!人類人口爆発!食料危機!政府の統制!!… pic.twitter.com/eYsnh1wYUQ— 映画『ソイレント・グリーン 《デジタル・リマスター版》』 (@SOYLENT_GREEN24) May 7, 2024
🟩COMMENT


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05月18日(土)
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