ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■東京バレエ団『ニューイヤー祝祭ガラ』
転換の数分を待つ客席の静寂。そこには「ボレロ」を観られるという期待の他に、今この演目を観ることに対しての緊張感もあったように思う。本公演の惹句は「不安な時代にエールを贈る、“元気が出るバレエ・ガラ”!」。『ニューイヤー祝祭ガラ』の開催が急遽決まった背景には、やはりコロナのことがある。しかしチケット発売後、みるみるうちに感染者が増えていった。10日に開催予定だった新国立劇場バレエ団『ニューイヤー・バレエ』は6日に中止が決まり(入場前ごはん食べてたとこでもロビーでもこの話題が聞こえてきたなあ……)、8日には緊急事態宣言が再発令。バレエ団からはSNSやメールで「予定通り公演します」「連絡先ご登録のお願い」といったメッセージが何度も届いた。三日前は大丈夫でも二日前、前日は? いや、当日になって中止が決まるかもしれない、と落ち着かない日々だった。「新年を寿ぐ」ニューイヤー・ガラが、こんなにも危うく感じられるとは。
そして「ボレロ」は、いつからか特別な儀式としての意味合いも持つようになった。東日本大震災が起こった十年前、シルヴィ・ギエムが『HOPE JAPAN』というツアーで来日し、「ボレロ」を踊った。「日本との絆を再確認するため」、「日本を心から愛したベジャールの魂をつれてくるため」というメッセージだった。「ボレロ」は観る者を勇気づけ、力づける。「災厄を祓う」という願いも込められるようになった。そういえば、上野さんのボレロを観るのは震災一ヶ月前の公演以来、十年ぶり。会場へ向かう電車のなかで、重松清の『おまじない』を読んでいた。偶然とはいえ、やはり震災のことを思い出さずにはいられなかった。
顔にかかった髪を振り払う。上野さんの踊るボレロは、本来の振付にはない箇所にも美しさを見出せる。だよなあ、そのままだったら貞子みたいになっちゃうもの(笑)。そういえば前回観たときは、ネイルが光る様子や、爪か指にひっかかった髪の毛がちぎれて飛び散る瞬間が鮮明な記憶として残っている。表情も豊か。官能的でエモーショナル。十年前に観たときとは違い、余裕も感じる。そんなメロディに付き従うリズムがまた、際立った仕上がりだった。こんなにリズムに惹きつけられたのも初めてだ。円卓を取り囲むリズムのなかから、4人のダンサーが入れ替わり乍ら正面に出る場面のキレが素晴らしい。昨年『M』を十年ぶりに上演したことと無関係ではないだろう。ベジャールの作品を多くレパートリーに持つ東京バレエ団、これからも上演し続けて欲しい。
「ボレロ」は単調なフレーズの繰り返しで盛り上げていくというシンプルな構成上、演奏者のスキルが顕著に現れる。これ迄観た生オケでの「ボレロ」で、ファゴットかオーボエかトロンボーンかホルンがやらかさなかったことって数える程しかない……今回もヒヤッとするところがありましたが、リカバリが抜群。バレエ公演での演奏を主とする、シアター オーケストラ トーキョーの底力を見た思いです。
急遽決まった公演だけど充実のプログラム。観られてよかった。“元気が出るバレエ・ガラ”でした!
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ラストを飾ったのは #ベジャール の傑作 #ボレロ ! 新年に相応しい華やかなステージに会場は大いに盛り上がりました!本日の舞台がご来場くださったお客様にとって、明日へと向かう活力となりますようにと一同心から願っております。また次の舞台でお会いしましょう! #東京バレエ団 pic.twitter.com/byuTXvrdPl― TheTokyoBallet (@TheTokyoBallet) January 9, 2021
・〈ニューイヤー祝祭ガラ〉急遽開催決定! 上野水香、コロナ禍のいま『ボレロ』を踊る決意┃NBS News ウェブマガジン
・【鑑賞眼】東京バレエ団「ニューイヤー祝祭ガラ」 上野水香の祈りのボレロ┃産経ニュース
・今「ボレロ」を踊れる日本のダンサーって、現役だと柄本さんと上野さんだけなんだっけ? 現役っていい方も変だが……今ってジル・ロマンが許可出すの?
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01月09日(土)
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