ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ASH&Dライブ2019』
さて最初のコントはなんだ? と気を改めてミットを構える。繰り広げられたのは斉木さんと久本さんのカニエビカラオケショー。今度はセパタクローのボールが飛んできた気分であった。カオスに陥る観客。斉木さんの歌が強烈過ぎて、歌詞の内容が全然頭に入ってこない。久本さんがなんとか軌道に乗せようとするんだけど、相手が規格外過ぎて全然円滑に進まない。歌のお兄さんとお姉さんがエビとカニの扮装(でいいのか、あれ?)で歌を唄い、客席を練り歩きたいやきを配り、もうこの歳なんで引退するとかしないとかひと悶着あり、訳がわからないまま大団円を迎える。あれは何だったんだろう、今でも咀嚼出来ない。ちなみにたいやき配り、あとで二階にも行きますからねといっていた。やさしい。実際行ってた。でもステージ上で行われてるコントとは全然関係ないタイミングで現れて配り出したので、二階席が騒ぎになってた。一階席からは全く様子が見えないので何がなんだかわからない。『東海道四谷怪談』で、歌舞伎座各所にお岩さんが現れたときの感じに近い。
続いて出てきたラブレターズ。「……やりづれえなー」「なんでこの出順なんだよ」とボソリ、これが大ウケ。わかる、わかるよ。しかしヤクルトレディコントは正攻法でめちゃめちゃ面白く、そうだよな、コントライブってこういうものなんじゃないのか、そもそも……とホッとする。そういう意味ではラブレターズと阿佐ヶ谷姉妹、ザ・ギースはたよりになる(笑)。下着泥棒、SLクラブネタ面白かった。素直に楽しかった。阿佐ヶ谷姉妹の「ガリ色のドレス」最高、ギース尾関さんのSL嬢のコスチューム最高。
しかしふりかえってみれば「“コント”ライブ」とは銘打ってなかったな。ライブにもいろいろあるのだと思い知りました。ASH&Dは芸人さんも役者さんも所属している事務所ですが、ライブに出るからには何か披露しなければならない(というか社員も出演しとるがな)。ムロさんときたろうさんは出所ネタのふたり芝居をやり、田本さんは尾崎豊の「I Love You」を唄い乍らトランプタワー(大統領じゃない方のトランプね)を作った。歌はうまかったがタワーは途中で崩れた。そして夙川さんと古関さんが提出したのはふたり芝居という名のほぼ実録であった。恐ろしくて書けない。というか「桑野さん」の話、以前『有吉反省会』で観たことがあったのでなんとか落ち着いていられたが、初見のひとはさぞや戦慄したであろう。悲鳴もあがってましたね(微笑)。ちなみに古関さんはきたろうさんのご子息なんですが、大竹さんとこの涼太マネといい、もともと不思議な事務所だったがこれからどうなっていくのだろうという期待…期待だろうか……不安? いや、それも違う。見当がつかない。行く末を見守りたい(笑)。
さあ、トリはシティボーイズ。きたろうさんちに初孫が生まれ、それを斉木さんとまことさんが見に来るというコント『赤ん坊待ち』。赤ん坊は不在で、帰りを待っている間三人があーだこーだとグダグダする。きたろうさんは赤ん坊になり、赤ん坊はポットになる。空の、あるいはポットを寝かせたベビーベッドを覗き込む三人。不条理な展開、何ひとつ解決しないままの暗転。ああ、これは『ゴドーを待ちながら』だ。暗闇のなか、この場にいられた幸運をしみじみ噛みしめる。シティボーイズのライブを観始めて二十年というところ。勿論もっと昔から、結成当初から観続けているひとたちもいる。こんなコントが観られる未来を思い描いていたひとはどのくらいいるだろう? そしてそれが実現するなんてことを。
台本どおりか間違えたのか区別のつかない台詞、それをたしなめる言葉もアドリブなのかどうか。もはやそれが「あたりまえ」。そしてそれが、面白い。シティボーイズが続いていること、三人が舞台に立っていること。コントをやっていること。それは本当にちいさな確率だ。年老いた身体と、重ねた人生経験と、長い時間をかけて培われた関係がないと表現しえないコント。彼らにしか出来ないコント。
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08月31日(土)
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