ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『世界は一人』
パイプカットのくだりでは笑いが起こっていた。昨年『て』を観たときに思い当たり、感想が書けなかったことをまた思い出した。いつから? ということだ。父親はいつからパイプカットをしていた? 父親のDVはいつから始まった? ひょっとして自分の父親は別のひとかもしれない。自分はレイプ(夫婦間にもレイプはある)によって生まれた子かもしれない。いつぞやの対談で岩井さんと前川知大が話していたように、私も相手が電話に出ないと「あ、死んだ」と思うタチなのでなあ。台詞に書かれない時間のことを考える余白が岩井さんのホンにはあり、その余白に思い至ることがあるかどうかで、物語はいかようにも変わっていく。

と、岩井さんの作品はついつい自分に寄せて観てしまうので、芯に当たるとダメージが大きい。それでも、また観に行ってしまうな。

遠くの客席迄届く音楽劇(音楽:前野健太)という形式、回転扉にも遊具にも見える大型ハイバイドア(美術:秋山光洋)、そして衣裳(:伊賀大介)と見立ても素晴らしかった。網柄のタイツを履いているだけでなんとなく母親のキャラクターを見せる。ネッカチーフを巻くだけで女学生になる。『おとこたち』(衣裳:小松陽佳留)での見立てにも唸ったが、この辺りは岩井さんからイメージを発注しているのだろうか。衣裳によって平原テツのプロポーションのよさが際立つ、というのも新しい発見でした。

03月02日(土)
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