ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[648123hit]
■『fractrec launch / mouse on the keys 10th anniversary』
黒い緞帳に新しいバンドロゴ、続いて十年間のアーカイヴ映像が浮かびあがる。クラシックな映画のよう。幕があがると後方にシンメトリー配置のスクリーンが二面、ポール型のLED照明に囲まれた楽器群。メンバーの衣裳もかわらずモノトーン。いーやー美しいわ……見惚れていると「I Shut My Eyes in Order to Sea」、ドカンと「Leviathan」。音デカい! ドラムデカい!
事前告知されていなかったゲストプレイヤーは佐々木大輔(tp)、根本潤(sax)、ケンジー(sax)。アンコールで飛田雅弘(g。歓声わいた。envyの今後にも期待!)、千葉広樹(cb)。VJはrokapenis。
視界を遮るものがないのでプレイヤーの手元も動きも表情もガッツリビューだ〜と喜んでいたのも束の間、スタイリッシュな暗い照明で予想より見えなかったっていうね……てかゲストも見えない。ネモジュンが暗がりに現れたとき、出てくるとこ見てなかったからおばけかと思ってギョッとしたわい。ハロウィーンだけにな〜。ネモジュンも佐々木さんもそろ〜と出てきて、そろ〜と楽器置いて出てったりしてて。ストロボっぽい照明もあり川浮ウんの動きがまんまコマ送りに見えてニヤニヤ、「Seiren」では暗闇でカウベルを打ち鳴らすネモジュンのシルエットにニヤニヤ。いや、格好いいとおかしいは紙一重です。
とにかく空間全景がひとつの美術作品のよう。この風景は観客だけが見ることが出来て、プレイヤー自身は見られない。なんて特権、感謝感謝。
演奏の緊張感は途切れることがない。「fractrec」レーベル設立第一弾となる新譜『Out of Body』からも数曲披露。楽曲群は観念的な方向へ向かっている印象。そこにこのバンドの特性である身体性が加わる。観念と肉体は常に切っても切れない関係、このバンドを見ているとひしひしと感じる。キーボードについているちいさな灯り(譜面台ライトを鍵盤用に使ってると思われる)のおかげで、清田さんの手元はよく見えた。印象的なネコの手。「さて、いきますか」と言うようなストレッチ、演奏前に鍵盤上を滑らせる指。ああ、次は「最後の晩餐」だな、と判る仕草も楽しい。引きで見ていると、川浮ウんと清田さんの丁々発止が非常にスリリング。「soil」では『irreversible』のワンシーン、清田さんがニヤ〜とエロい顔で川浮ウんを見ているシーンを思い出しましたよね。官能的な演奏というのも一貫してる。清田さんは川浮ウんのことも新留さんのこともよく見ている。そうそう、上からだと普段はなかなか見えない新留さんの手元も結構見えてよかった。
演奏はどんどん進化している、音のレイヤーも増える。以前は単音右手だけだったシークエンスに左手でコードを足していたり。ブリッジのインプロもどんどん変わる。川浮ウんの動向を見て、清田さんと新留さんが顔を見合わせる。笑っているようにも見える。どこに行くのかわからなくなるようなフレーズからよく戻れるよね……全然違う曲挟んでたりして。目が離せないし、耳は全く油断出来ない。
それにしても軽やか。不思議だ、こんなにパワフルなのに。腰の据わった演奏で腹にくる爆音、それでもフットワークが軽い。空間を飛びまわるような音の鳴りにも驚かされる。思わずスピーカーの位置確認しちゃったくらい。二階席にいるのに、背中を撫でられるような音もあった。
[5]続きを読む
10月30日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る