ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『パーマ屋スミレ』
夢とあこがれ、祈りと幻。それらをこんな形で観ることが出来る。演劇の、舞台のこういうところに惚れている。それにしても大大吉を演じる酒向芳マジかっけー。髪がネタにされてますが、そんなんどうでもいいねーってくらいプロポーションがよく立ち姿が美しく、そして声が魅力的。ファッションデザイナーの夢が叶っていればどんなにか……と思ったが、大吉時代の私服と手づくりマフラーを見る限りどんなに…なっただろう……ね? と違う意味で我に返りましたが。こういうとこ鄭さんならではの笑いどころですね。

前回に増して魅力を感じたのは須美の姉(長女)役・根岸季衣。周囲をも明るくするその陽性、強さ。『焼肉ドラゴン』の呉信吉(櫻井章喜が演じた人物)、『たとえば野に咲く花のように』のダンスホールの支配人(大石継太が演じた人物)にあたる人物だな、と思う。つまり理想の人物です。こういう心持ちで生きたいわ……。須美と英勲をそぉ〜っとふたりきりにさせるときの動作と表情、いたずらっ子みたい。かわいらしくて悶絶した。そして衣裳(前田文子)。華美な長女、派手ではないがセンスがよく、服をだいじに扱っている次女、質素極まりない三女。“三人姉妹”の職業だけでなく性格をも表すような、それぞれの服。

闘病中でもある南果歩を応援しているかのような空気が客席にあった。登場した瞬間ちいさな歓声があがる。それに応え「私は大丈夫」とでも言うかのように、南さんは声を張り、活発に動く。いよっ、座長! と大向こうをかけたくなるような熱演。カーテンコールの拍手は登場人物に贈ると同時に、その役を演じきる役者たちへのエールのように響いていました。

そうそう、ムラジュンはカーテンコールでも英勲だった。脚をひきずってる。蜷川さんの『四谷怪談』のとき、役にのめりこんで衣装のどてら着たまま家から稽古場に通ってたってエピソードを思い出した。少しふっくら(それでもほっそいが)していたのでホッとしたり。一時期心配になる程痩せてたからね……。大吉役の森田甘路にここぞとばかりに手づくりマフラー巻き付けられて(ヤッタネ大吉よかったね!)、照れくさそうにはにかんでました。

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その他。

・毎回言ってるが栗原直樹の擬闘まじかっけー

・七輪でイカ焼くシーン、ほんまもん焼いてるからすごいいい匂い。おなかがすく

・笑いとシリアス。両者が同居するのは作者の本意でもあるだろうが、そのバランスは難しいものだなと実感した回だった。水が飛び散る乱闘シーンがあるので、最前列の客にはビニールシートが配られている。該当シーンになったらこうするんですよ、と幕間に楽しいレクチャーがあった。二幕がはじまりそのシーンになったとき、一部の観客が爆笑した。兄弟が激しく乱闘し、水が散る度に何度も笑い声が起こった
・観たひとは判ると思いますが、とても笑えるシーンではないんです。むしろいちばん悲しいシーンかもしれない。私の隣席のひとは思いあまってか、笑い続ける集団を振り返りにらみつけていた。受け手の問題ではあるけれど、さじ加減って難しいなと思った

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月イチでSunday Bake Shopへ寄るのもひとまずおしまい。リュバーブのケーキすっごくおいしかった! 新国立劇場での次回の観劇は未定ですが、すっかり味をしめてしまった今、日曜日以外の選択肢が考えられません(笑)。

05月29日(日)
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