ID:43818
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by kai
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■『地獄のオルフェウス』
戯曲と言えば、フィリップ・ブリーンの演出はト書きにかなり忠実だった。このト書き、「指定」とも言えるような細かい情景、人物描写が記されている。序盤、ドリーに話しているのに観客側を向くビューラが気になった。蜷川幸雄がイギリスで『タンゴ・冬の終わりに』を演出したとき、役者たちから「何故対話の場面なのに相手を見ないのか、客席を向くのか? リアルじゃないよ?」と質問されたと言うエピソードが印象に残っていたからだ。イギリス人演出家のブリーンが何故? 果たしてト書きには「説明として」「観客に向かって」「対話の体裁をとら」ず、「このモノローグによって上演全体の非リアリスティックな色合いが決まる」とあった。「珍妙な服装」と指定された彼女たちの衣装(黒須はな子)もひと目見た瞬間から違和感が伝わるものだった。この「似合わなさ」は、彼女たちの生きづらさを表現しているのだと思った。窓外に雨が降る家屋の美術(マックス・ジョーンズ)もト書きに忠実でありそして印象的。丁寧に作られた舞台は、観たあとも噛み締められる。女性たちの陰口を、執拗な迄の囁き声に増幅させる演出はブリーンのアイディアだと思われる。幻聴のようなこの声は、レイディの心を傷付けるに充分だった。
ビューラとドリーを演じた峯村リエ×猫背椿コンビのやりとりは流石。保安官を演じた真那胡敬二もよかったなあ。そして久ヶ沢徹の役! めちゃこういう久ヶ沢さん観たかったって役! 夢が叶ったよ……おおうおおう(泣いてる)。敢えてどの役か調べないで行ったんですよね…ビューラとドリーの会話聴いてて「え? まさかまさか」と思って。「この役? てか出る迄にエラいハードル上げてないか」と思って(……)。で、ホントにその役で出てきたとき心で「キターーーーー!!!!!」て叫びましたね。ギャー! は、はつこいのひとー!!!!! はあはあはあ、有難うございます有難うございます。こんな二枚目の久ヶ沢さんが観られて幸せです。キャスティングしたひとにも感謝ですよよよ。
で、この公演が発表されたときから思っていたのだが、当初はこれ、蜷川さんが演出する予定だったんじゃないかな。それはそれで観てみたかった。いやでも今回、ブリーンと言う演出家を知ることが出来てよかった。パンフレットには、彼から蜷川さんへの感謝の言葉が記されていました。
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・オルフェウスと言うと脳内でこれが鳴る、多分もう一生そう。名曲
David Sylvian - Orpheus
05月09日(土)
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