ID:43818
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by kai
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■National Theatre Live IN JAPAN 2015『欲望という名の電車』
ブランチ役は、彼女こそブランチにふさわしいと思える役者と、彼女が演じるステラも観てみたいと思わせる役者がいる。ジリアン・アンダーソンは後者。医師に美しい発音で「ミス・デュボア」と呼びかけられたとき、その瞳に宿る一瞬の輝き(これを捉えたカメラに感謝!)は、死に向かう人物が一瞬見せた眩さだった。パンフレットに解説を書かれていた方は、この表情を見て「ブランチの更生」と言う希望を感じたと言う。成程そういう解釈をも引き出す表情だった。二方言話者(bidialectal)だそうで、声色も言葉遣いも変幻自在。スタンリー役のベン・フォスターは、前述したように差別され、嘲笑される傷付いたスタンリー像が新鮮でもあった。ブランチに対する感情に、憎みや怒りよりも悲しみや諦めがつきまとう。あの瞳には惹きつけられた。終盤ブランチを襲う場面で、彼女の顔をドレスで覆い隠す仕草も幾通りもの解釈が出来る。多面的な人物像で、興味深いところ。

ヴィヴィアン・リーとマーロン・ブランドの映画、ジェシカ・ラングとアレック・ボールドウィンのTVドラマ(90年代はVHSがレンタルにあったが、DVDは出ているのだろうか)を観ていたが、思えば日本語で上演されない『欲望〜』の舞台(中継)を観るのは初めてなのだった。「死にたくない」と訳されていた台詞は「Don't Let Me Go」で、ふと『わたしを離さないで』の原題(Never Let Me Go)を連想し、はっとしたのは新しい体験。「豚」を「pig」と「swine」で言い分けているのも今回初めて気付いた。あの流れから言うと「swine」の方がもっと侮蔑的なんだろうなあと思った…侮蔑的って言うか、知性のないおまえにはわからんだろって言いまわし。「盲が盲の手をひいて」が「The blind are leading the blind!」ではなく違う言葉に言い換えられていた(確か)ところには時代が反映されているか。
(20150313追記:あと「極楽(天国)」は「Elysian Fields」なのね。単純に「heaven」だと思っていた)

今回の演出は舞台袖がないので幕間以外の転換(家具の位置を動かしたり小道具を持ち込んだり)は役者たちが自ら行う。スタンリーに襲われたブランチはそのまま舞台に残るので、最後のあの美しい門出はどうなるのかなと気になった。果たして乱れたメイクはそのまま。思わずフランシス・ファーマーを連想してしまう。そしてブランチとフランシス・ファーマー両方を演じているジェシカ・ラングってすごいね……と思ったりした………。

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その他。

・ブランチの浮世離れした言いまわしはウケてたなー。ステラがケーキにたてるロウソクの数とかも。こういうとこは日本とも変わらないのね
・しかしなんで笑ったのか判らないところもあった。アドリブってんじゃなくてこちらからすると普通の受け答えに感じたところにドッと笑いが起こったり
・と言えば役者がマイク装着してたのはちょっと気になったな。ステラが着替えるときノイズが生じていたし。あのキャパでマイクはないだろう…収録のためのものかな

・スタッフクレジットにケーキ作成者(社?)があったのににっこりした。白くてかわいいシンプルなケーキ。劇中つけっぱなしのロウソクがどんどん短くなってってちょっとハラハラした
・ロウソクと言えば、鈴木勝秀版『欲望〜』でミッチを演じた田中哲司さん、素手でロウソク消してたよね! あれすごく印象的だった。どうやってたのか未だに気になる
・そうそう、パンフに篠井英介さんのお名前が載っていてほろり。杉村春子、大竹しのぶと、個性の違う俳優が「いずれも役に対する情熱がほとばしる演技だった」って

・休憩時間15分、その後二幕が始まる前に劇場紹介と芸術監督、演出家、スタッフのインタヴュー込みで202分。いんやこれが全く長く感じないのよ…この作品が好きだからってこともあるだろうが
・休憩中は、同じく休憩中の劇場がそのまま映る(画面隅に休憩時間のカウントダウン表示)。これをぼんやり観るのもなかなか楽しかったです
・余談だが公演初日前に「上演時間三時間越えです!www」みたいに鬼の首とったみたいに流れてくるツイートすごくいやなの…きらいなの……
・長尺の強さ、面白さってあるんだよ……

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03月11日(水)
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