ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[648334hit]

■『王の涙 ―イ・サンの決断―』『薄氷の殺人』
そして宦官の尚冊カプス、しかしその正体は…を演じたチョン・ジェヨン。沼界隈では有名(?)だったので顔はよく存じ上げており、やっとお仕事を観ることが出来ました。田辺誠一さんに顔立ちが似ているなあと言うのが第一印象でしたがなんでも「千の顔を持つ俳優」だそうで…ヒィ! マヤ! 常に暗殺の脅威に晒されている王が、唯一気を緩められる相手。静かに微笑む表情に、複雑な過去と王への秘めた思い、そして選んだ道への決意が現れる。ふたりが過ごす、楽しいひとときの場面がとても印象に残りました。

-----

その他。

・ところでふたつ気になるところがありまして、ひとつは七月下旬の話なのにあんなに息が白くなる程寒いの?(朝夕はすごく気温が下がる土地だったのかな)と言うのと、ポクピン(かわいい響きの名前だなー)への「また着替えてるの?」と言う台詞の意味。性的虐待も受けていたと考えていいのだろうか…それとも当時の風習として、違う業務の都度服を着替えていたのか?

・でもわざわざ「いつからそうなの?」と続けて訊かれるでしょう。となるとやっぱり……。つらい………

・ポクピンなー。あのあとどうなったかな……(涙)それにしても出てくる子役、皆かわいく皆めちゃ巧かった

・幼少の頃、思いあまって全裸になり実家の業務用米櫃に飛び込んで、肌に密着する米の感触に性的に興奮して泳いでいたら父親に見付かってエラい目に遭った逸話を持つ菊地成孔のファンとしては、あの米櫃に米が入っていたらどんなによかっただろうにと涙しました

・そうそうこの米櫃の件、上映前に親切な人物相関図と歴史についてのちょっとした映像コーナーがあったんです。こういうの初めて観た、これは親切だわー。助かりました

・と言えばその米櫃が割られたときの描写も素晴らしかったな…ひとが死ぬってのはこういうことだよなあと。血も排泄物も隠さず見せる。この描写があるとないでは、心への刺さり具合が全く変わる

****************

『薄氷の殺人』@ヒューマントラストシネマ有楽町 シアター2

原題は『白日焔火(白昼の花火)』、英題は『BLACK COAL, THIN ICE』。『王の涙』とハシゴしたもんだから、そのカット数の違いにまず瞠目しましたよね。これのカット数が多いヴァージョンて、どんなんなんだろう。全く違った印象になりそう(後述のインタヴュー参照)。

1999年、華北の6都市15箇所の石炭工場でバラバラ死体が発見される。容疑者は射殺され、真相は闇のなか。捜査途中の銃撃戦で負傷した刑事ジャンは、警備員として天下り的な職場に異動になる。2004年、新たなバラバラ殺人事件が連続して起こる。捜査を進めるうち、これらの事件と5年前の事件の接点として、ひとりの女性が浮かび上がる。ジャンは彼女を独自に追いはじめる……。

めっちゃ好きな作品でした! 好きな冬の映画。光=色の効果も好き。自然物である雪の反射光、人工物であるネオン管の発光色。女性の鼻頭、頬をほんのりと染める紅。美容室やナイトクラブのけばけばしい赤。音もよかった! サウンドトラックと、劇中で鳴る音楽と、効果音と、劇中から実際に拾った音。言葉が少ないからこそ耳を澄ましてしまう台詞。

説明が少ないところも好き、緊迫した場面に突然挿入されるすっとぼけ感も好き! 意図的に入れられている本筋とは関係ないエピソード(馬のシーンとか)や、意図的ではなかったかも知れないシーン(雪で滑ってずるっとなってしまったり)をNGにしないところとかね。そしてリズムがとてもいい。長回しのシーンが弛緩せず、緊張のまま時間が過ぎる。どの場面も目が離せない。


[5]続きを読む

01月22日(木)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る