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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『高畠俊太郎 debut 20th anniversary live “'14←'94”』
「どうせだから思い切りサイケなやつばっかやろうと思って」「二十年前にこんなんやってたら売れないよね〜」「明らかに変わったのが『メリーゴーランド』。もう全然違うでしょ? 何?! 何かあった?! って思うでしょ?」。話す度俊太郎は爆笑していた。メンバーも笑ってた。しかしその「売れない」音楽は、ある種のひとたちにはとてつもない衝撃を与えたのだ。二十年経ってもその衝撃は変わらないし、二十年経った今もその普遍性に驚く。フィードバックの轟音、空間を切り裂くようなカッティング、極彩色が見えるようなリフの絡み合い。バンドにおけるギターの魅力が詰まっている。自分のなかでギターバンド、と言えばやはり今でもウルトラポップとポインターだ。そこに唯一無二のあのヴォーカルがのっかる訳で、いくら本人たちが「大好きな音楽を完コピした」と言っていても、他にはない音とバンドなのだ。そしてそこからオートパイロットの、独自な音作りへとまた進化していった。
当時よりメンバーのたたずまいは柔らかくなった。しかしどんなに笑顔でいても、その演奏には、声には、歌詞には、うっかり触れると指を喰いちぎられそうな殺気がある。それなのにひとなつっこさもある。こんなバンド、他にはいない。今でもいない。
「今日はやること沢山あって大変で。でも始まってみればあっと言う間だね」「ホントはここで引っ込んで、これをアンコールでやるつもりだったの。でも引っ込まなくていいかーって。もう続けてやります!」と「Yellow Body」。インディー時代の初期曲で、「何?! 何かあった?!」の前だ。この屈託のなさ、ニヒルでシニカルな歌詞。同じバンドとは思えない? でも、その両極端を持っているのがこのバンド。ギターを置いて、ハンドマイクで、当時よく着ていたのと似た(まさか同じものでは…ないよな……いやでも体型変わってないしなー)青いシャツ姿で。「リハから唄いっぱなしで、もう喉が…声が出なくてごめんね」なんて言っていたけど、どの口が言うか。真っ青な空をスカーンと抜けていくような声で俊太郎は唄いきった。実質二度目のアンコール、再び「ホント声がもうガラガラ、ごめん」と言って「星ニモ負ケズ」。ハスキーな声でも、それは空へとまっすぐに飛んでいった。
終演後、フロアには沢山の笑顔があった。久々に再会したらしい友人たちや先輩後輩。「来てよかった」「またあるといいね」の声。この歳になると有事や不幸で集まることが増える。入院とか、葬式とか。ライヴで集まることが出来る、ライヴで久し振りに会うことが出来る。なんて嬉しいことだろう。そう、この歳になると「いろいろある」。それでも彼の作る歌と、彼の唄声はいつでも瑞々しい。「ウルトラポップは二十五周年、三十周年とまた集まりたい。そのためにまたこれからがんばります」とのこと。私も日々をしっかり暮らそう。
短い人生、聴ける音楽には限りがある。そのなかに俊太郎の音楽があってよかった。長生きはするもんだ(矛盾)! 仕事の疲れもありふらふらだったけど、なんとなくシモキタを散歩してから帰りました。この街で鳴り続けている音楽に会えてよかった。そして今、聴くことが出来てよかった。
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・MASS: 高畠俊太郎 20周年記念インタビュー 前編
・MASS: 高畠俊太郎 20周年記念インタビュー 後編
(20241115追記:俊太郎30周年を機に検索からここに辿り着いてくれた方もいらっしゃるようなので……消えたページをWayback Machineでサルベージ。反映されるかな?)
・MASS: 高畠俊太郎 20周年記念インタビュー 前編
・MASS: 高畠俊太郎 20周年記念インタビュー 後編
ウルトラポップ解散の真相とかさらっと喋ってらっしゃいます。初めて知った話もいくつか。バンドに拘る理由も。「どんな人と一緒に音楽を鳴らすか、それが大きな意味を持っている」。
そしてやっぱり上田現のことは欠かせない。長く短い、二十年
・MCで言及されてたけど今回カメラが結構入ってた。今後記事になるのを期待
11月23日(日)
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