ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[648394hit]
■『火のようにさみしい姉がいて』
俳優と言う生業そのものにもシビアな作品。それを演じる演者はやはりシビア。しかし彼らは軽やかで、シビアのなかのユーモアを見逃すことはしない。大竹しのぶの「ハハハハハ」と言う笑い声と裏腹に目が笑ってない顔は伊藤潤二のマンガを連想する程で、そのおっかなさに震え上がると同時に笑いがこみ上げたし、それを受ける段田安則が巧い巧い。同時に段田さんは匂い立つような色気をも発している。宮沢さんは、献身的な妻から演じることのプライドを噴出させる俳優と言う、複雑な変化を辛抱強く演じている。三人の緊迫感溢れるやりとりが見事。記憶しにくいのか発声しにくいのか、珍しく三人とも噛んだり台詞に詰まる場面が多かったのが気になるが(こんな彼ら、すごく珍しいと思う)、それを追いやるくらいの演技合戦を見せてくれた。演じることは苦しいが、それを軽く凌駕する快楽があるものなのだ。そう言っているようだった。三人は官能的ですらあった。
三人を取り巻く「故郷の人々」はつかみ所がないのに存在感が強烈で、その誰もが印象に残る。山崎一は性別も年齢も曖昧模糊となる、故郷の幻想そのもののような役を巧みに演じる。市川夏江、立石涼子、新橋耐子の三婆、西尾まりは故郷に留まり歳を重ねるひとたちの時間を体現。そして中山祐一朗と平岳大は上越の妖精のようでしたよ…片や帰国子女、片や高校〜大学をアメリカで過ごし英語ベラベラな子なのに(笑)何故ハナタラシが似合う、何故どてらが似合う。ゴールドの面々は毒消し売りの婆だけでなくサーカスのダンサーも務める活躍ぶり。ネクスト内田健司はワンシーンだけの出演乍らも目を惹く。満島真之介はひとり「故郷」とは無縁の人物。気のいい若者とオセローの野望の両面を、若者の肉体の美しさとともに見せてくれた。
観客の年齢層は広かった。どちらかと言うと高めか。清水さんや蜷川さんと同世代であろう方も多かった。この手の作品がこの規模の劇場で上演されること、それが満席になっていることは心強い。上質な舞台を提供してくれると信用出来るシス・カンパニー、作品選びの姿勢と制作の手腕に敬意を。
-----
よだん。戦中戦後のどさくさに紛れて性別を偽る(演じる)人物が『火のようにさみしい姉がいて』にも『cocoon』にも出てくるのでハッとした。藤田くん、蜷川さんと何かやってほしいな。時間はそう沢山あるもんじゃない
よだん2。こないだのゴールドシアター公演を観たときにも思ったが、ゴールドの皆さんの身体能力な……。私が彼女たちの年齢になったとき、ラインダンスが出来るだろうか? 今だって怪しいよ! 身体のメンテだいじ! と思いましたいやマジで
09月13日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る