ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[648394hit]

■『グランギニョル未来』
『グランギニョル未来』にも登場し、アメタニはここで死んだと言われた白い箱。そこから出てきた飴屋さんは演劇活動を再開する。『転校生』(初演、再演)、『3人いる!』(1回目、2回目)、『4.48サイコシス』。振り返ると『転校生』の演出を依頼した方(追記:SPACの宮城聰さんだったろうか?…と自分の日記を読み返してみて、宮城さんだったと思い出す・恥。twitterでご指摘くださった@ne65wさん、有難うございます)と、Festival/Tokyo(F/T)09〜13のプログラム・ディレクターを務めた相馬千秋氏の慧眼に瞠目する。『ソコバケツノソコ』にバケツが登場し、『BLANK MUSEUM LOOKING FOR THE SHEEP day1』の「馬」から戦争を、『302号室より』から航空機事故を思い出させる。断片が繋がっていく。飴屋法水と言うひとりの人間、その家族と呼ばれる存在。この九年間で、家族は増え、そして減った。次々と起こる災害と、これから起こりうることへの不安を抱え、家族は集まり、やがては散っていく。椹木さんは、飴屋さんの個人史をひとつの作品にまとめたとも言える。これからも更新されていく個人史を。そして、彼の周りの共同体を。ほんの些細な行き違いや、事故によって瞬時に失われる共同体。一緒に過ごした時間は、記憶に留められるのみだ。

飴屋さんも山川さんもそうだが、Phewさん、zAkさんと言ったひとたちが扱う「音」は記憶への定着力がとても強い。出演者にクレジットされていた(当日知った)、ホンマタカシさんがシャッターを切る音も記憶に残る。フラッシュの光に視界が覆われ、被写体の顔が白飛びする。『バ  ング  ント展』にもあった、顔のない肖像写真。写真のなかの家族の肖像は、どこの家族か判らない。そこに自分がいるかも知れない。共同体が過ごした夏は、光とともに記憶に焼き付けられていく。

台詞そのものは聴き取り難い箇所が多く、戯曲(『新潮』2014年10月号に掲載)が待ち遠しいところ。この作品のことは、考え続けていくと思います。

08月29日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る