ID:43818
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by kai
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■『夜中に犬に起こった奇妙な事件』
舞台をイギリスから日本に置き換えた上演台本、かなり辛抱強く粘り強く書いたんだろうな。蓬莱さん大変だったろうな。そしてその案を出した裕美さんの作品の翻訳(解釈)力もすごい。非常に実感が伴うものになっていました。静岡から東京の距離感、JR東京駅から東西線に乗り換える行程の複雑さ、そして駅の混雑。東京駅の描写、すごかった…あの音と表示板の洪水。あの情報の洪水を、選択する術なく全て喰らった主人公の気持ちを思うと苦しくなる。その恐怖はどれ程のものだったか……。あのなかから自分に必要な情報だけを選択し他を遮断する、自分たちはこれを普段無意識にやっているんだと気付き、なんだかゾッとした。遮断出来ることは果たして優れていることなんだろうか?無関心なだけではないだろうか。加えてひとの多さ。干渉するひと、避けるひと、無関心なひと。15歳の少年が五時間うずくまっていても放っておかれる状況。音響、映像と少数精鋭の演者で表現される都会の縮図、白眉のシーンでした。音楽、美術、照明もよかったなー。音楽とピアノ演奏が、イキウメでおなじみのかみむら周平さんでした。

冒頭書いたようにとにかく森田さんがすごいし、他の役者さんもそれぞれの特性を存分に発揮しています。落ち着いた言動の裏に激情を秘めている入江さん、奔放で愛情とエゴが拮抗する高岡さん、常に優しく主人公を見守り、彼の生きづらさを心苦しく思う小島さん。西尾さんの声の強さはとても刺さる。石橋さんはいやな役回りを疲れた男として見せてくれる。柴さんと安田さんはさまざまな身体表現で舞台に緊張感をもたらす。宮さんの声もいいな、恐ろしい世界に生きる主人公をちょっとだけリラックスさせてあげていたように見えた。久保さん演じる牧師の困惑は、信仰の定義を持たない主人公にどう映ったのだろう。そして木野さん。認知症だと言う設定はプログラムを読む迄気付かなかったけど、そういうものかも知れない。普通に話しているけれど、どこかが噛み合わない。主人公との会話はとても自然でかわいらしかった。個人的に心がいちばん寄ったのはおとうさんでした。トシか。

アンサンブルとなったときのチーム力がまた素晴らしい。いい座組でした。

04月08日(火)
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