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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『ゼロ・アワー ―東京ローズ最後のテープ―』
作・演出は『エレベーターガール』をはじめとする案内嬢シリーズ、『マイ・グランドマザーズ』『フェアリーテール』等で知られる美術家やなぎみわさん。フェスティバル/トーキョーの『カフェ・ロッテンマイヤー』を手掛けたのもやなぎさんでしたね。今回の作品にはサミュエル・ベケットの戯曲『クラップの最後のテープ』も織り込まれているそうです。三年前に演劇活動をスタートしたやなぎさんですが、考えてみればあのストーリーテラーの才を発揮するのに演劇と言うフォーマットはぴったり。綿密な取材に基づいたテキスト、そのテキストに施される最適なデザイン。それら緻密で優れたデザインのなかに、しっかりと存在する人間。そしてそれらを「ただ観ている」だけではなく、「その場にいる」「登場人物たちと同じ体験をする」よう、観客に施される演出。英語部分のシーンには字幕も出ますし、かなりの情報量です。上演時間は二時間でしたが、終わったときの疲労はかなりのものでした。しかしこの疲労はとても充実したもので、クライマックスに差し掛かったシーンでは、この物語が終わることがさびしく、名残惜しささえ感じました。
潮見以外の登場人物は第一言語が英語と言う役柄。出演者は殆どが初見の方ばかりでしたが、誰ひとりとして埋没するキャラクターがなかった。そして勿論皆さん声が魅力的。山田を演じた松角洋平さん(文学座出身だそうで、長谷川博己さんから花が贈られてきてました)は新国立劇場のレパートリーに、潮見を演じた吉田圭佑さんは松井周演出作品に出演されているそうです。今後の活動もチェックしておこう。時代のスケープゴートにされた東京ローズ≠孤児のアンを演じた荒尾日南子さん、「鶯」と呼ばれた唯一のプロフェッショナルアナウンサー、ジェーン・芳子・須川を演じた高橋紀恵さん(文学座)も素晴らしかったです。裁判を煽るラジオDJ役、モーリー・ロバートソンさん(本職DJでもあります)は声のみの出演乍ら強烈な印象を残しました。
あいちトリエンナーレのパフォーミングアーツ部門(ベケットがテーマ)でも来月上演されます。気になる方は是非。
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上演後、やなぎさんとロバートソンさんによるアフタートークがありました。役柄と同じようなマシンガントークを展開させるロバートソンさんにやなぎさんが「このままでは夜公演の入場が始まる迄続いてしまう」とぽつり(笑)。ロバートソンさんが演じたDJにはモデル(ウォルター・ウィンチェル)がいるそうで、彼の活動内容、人物像についての言及は非常に興味深いものでした。先日ウチのtwitter上でちょっと話題になった「お笑いのひとが選挙に立候補することが多いのは何故か、ヴォードヴィリアンが大衆を動かせるのは何故か」に関してヒントになるような内容でもありました。検閲されたテキストを演出により如何にして違うニュアンスで伝えるか、誰をターゲットにしようか、何をやり玉にあげようかと鼻を利かせるマスメディア、それに喰いつく聴衆についても。
使われたテキスト、音声についての出典解説も面白かった。アメリカ人が原爆は是か否かと討論するシニカルな放送劇に驚いたのですが、実在した番組だそうで二度びっくり。8月9日の15時台にラジオ・トウキョウでオンエアされたという記録が残っているとのこと。広島への原爆投下後数日で制作され、放送しようとした直前に長崎へ原爆が落とされた訳です。放送を敢行したラジオ・トウキョウのスタッフたちの心中はいかほどか…ここでも思いを巡らせました。
・東京ローズ - Wikipedia
・公式サイト|やなぎみわ演劇公演2013|ゼロ・アワー 〜東京ローズ最後のテープ〜
・やなぎみわ演劇プロジェクトのブログ
・あいちトリエンナーレ
07月14日(日)
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