ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『はぐれさらばが“じゃあね”といった 〜老ハイデルベルヒと7つの太宰作品〜』
史実とフィクション、実在の人物と虚構のキャラクターが、修治の前を通り過ぎて行く。再訪した三島で彼が見る風景は時間を遡り、そこにいるひとびとは当時のままだ。しかし実際の彼らは、修治と同じだけの時間を過ごしており、新しい生活を始めている。逃げてばかりの修治は彼らを通し、自分と向き合うことになる。現在だと思っていた風景に過去の人物が顔を出す、その逆も然り。自在に行き来する場所と時間は舞台の醍醐味でもありました。終始思案顔の菅原さんは、他人の言動を聴いている、見ているその姿で修治という人物を物語る。静かな青白い炎を発光しているかのような太宰像でした。
最後迄誰だか判らなかった「薬屋」。薬学を学び、編集者として働き乍ら作家デビューを窺っていた「どうやってひとを殺すか考えてる」彼は横溝正史でした。常に謙虚で柔和、社会的でもある。野間口さんが抑制の利いた演技ではしばしにおかしなことをしていました(笑)。身体が綺麗とほめられて、まんざらでもない表情でふんどし姿を見せつけるシーンもよかったわー。実際綺麗なお肌!おしりもきゅっとしてて美しかったですヨ!その薬屋が三人と初めて会う場面が幕切れ。初対面のあいさつは「はじめまして」。それは違う、はじめましては人間として僕らが出会ったときの挨拶だ。作家としての我々にはどんな挨拶がふさわしい?未来を知らぬ若者たちが、その挨拶を笑顔で叫ぶ。彼らの姿は暗転とともに暗闇に消える。
もうすっごいせつない舞台で大好きでしたが、前述したようにそこにはふんどし祭や乳もみやゲロや失禁が同時に載っているのです。ここだいじ!それにしても和装の菅原さんと久ヶ沢さんは眼福でした、おふたりとも堂に入った着こなしっぷり。菅原さんだけふんどし姿を見られなくて残念です、ええ残念です。
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桜桃忌前後に三鷹市芸術文化センターが開催しているシリーズ『太宰治作品をモチーフにした演劇』。今年で第10回になるそうで、すっかり名物企画ですね。「太宰が生きたまち・三鷹」として周辺店舗とも協力、劇場で配布された太宰クーポンを提示すれば特典付きのお買い物も出来ちゃいます。
06月29日(土)
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