ID:43818
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by kai
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■『ヘンリー四世』
閑話休題。ハル役は松坂桃李くん、シェイクスピア芝居が初めてとは思えない台詞まわし。リズム感がいいのかな、「読んでる」域をちゃんと出ている。いやあよかったわあ、あの冒頭のシーンの無邪気さ。裸舞台を全力で走る。若さの魅力に溢れてる。やがて無邪気ではいられない国の指導者として成長していかねばならず、それが大人になると言うことで、その辺りの揺れを気持ちよく見せてくれました。タイトルロールのヘンリー四世、木場勝己さんもよかったなー。国を統治する荒ぶりと自身の衰えの自覚と、後継者としてのヘンリー五世と同時に息子であるハルへの愛情と。引き裂かれる複雑な感情表現に良心を感じました。『葛城事件』で声はスズナリ、本体はさい芸に同時出演中(笑)の塚本さんはなんだかかわいらしい召使や街のひとをいい笑顔で演じておりました。前述した「市井のひとびと」を演じるニナカンの役者さんは本当に魅力的なひとばかり。岡田さんは最近すっかりおかまちゃんの役が多いですね(笑)。

そして立石涼子さん、冨樫真さん、土井睦月子さんの三人の女優さんが皆素晴らしくて!特に冨樫さん。一幕では夫を戦地に送りそして喪うパーシー夫人、二幕では威勢のいい娼婦ドル。全く違うキャラクターを演じ分ける実力もすごいけど、この二役を同じひとが演じていると、夫を亡くしたパーシー夫人のその後の人生をドルに見るような錯覚が起きます。そこでまた、環境や状況により人生を激変させされる市井のひとびとのことを思う。土井さんの役もそうで、一幕では夫の国(スコットランド)の言葉も判らないまま結婚したウェールズ人(ウェールズ語も披露)、二幕では夫と街を歩く溌剌とした女性。立石さんは二幕通して同じクイックリー役ですが、やはり夫を失っている。この辺り、蜷川さんがさい芸で演出した『オセロー』のデズデモーナとエミリアのことを思い出しました。「打ち捨てられた者たちの悲しみ」。こういう視線を忘れないところも、蜷川演出の好きなとこ。

04月28日(日)
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